図書館総合展フォーラム2012 in 仙台 図書館政策フォーラム2012「東日本大震災とMALUI連携」記録(速報版)

昨日、2012年5月27日(日)に開催された図書館総合展フォーラム2012 in 仙台 図書館政策フォーラム2012「東日本大震災とMALUI連携」の記録(速報版)を掲載します。

執筆は、ブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」で知られる佐藤翔さん(筑波大学大学院)です。

なお、本レポートは速報性を重視したものであり、内容については正確を期してはおりますが、100%の正確性を保障するものではありませんことをあらかじめご了承ください。

図書館総合展フォーラム2012 in 仙台 図書館政策フォーラム2012「東日本大震災とMALUI連携」の記録(速報版)

  • 日時:2012年5月27日(日) 13:00-17:00
  • 場所:東北大学マルチメディア教育研究棟(川内北キャンパス)マルチメディアホール* 講演者・パネリスト(敬称は「さん」に統一)
    • 大滝則忠さん(国立国会図書館長)
    • 今村文彦さん(東北大学大学院工学研究科附属 災害制御研究センター長)
    • 長坂俊成さん(防災科学技術研究所 防災システム研究センター リスク研究グループ長)
    • 高田正行さん(ヤフー株式会社 R&D統括本部 FE開発2本部 開発1部 部長)
    • 白石牧子さん(総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 制度係長)
    • 中山正樹さん(国立国会図書館電子情報部長)
  • パネルディスカッション司会:
    • 甲斐賢治さん(せんだいメディアテーク 企画・活動支援室 室長)

講演および報告

開会挨拶(奥山恵美子さん・仙台市長)

今日は、こうして大勢の方にお集まりいただいて、東日本大震災をテーマに博物館、図書館、アーカイブ関係の施設の連携について意見を闘わせるとのこと。地味なテーマとも思うが、社会全体の様々な要素を揺り動かし、今尚つづく東日本大震災の意味を考えると、その記録をいかに残すかというのは難しいテーマと思う。
私自身、仙台市民図書館の館長をしていたこともあり、震災直後から図書館に様々な資料を集めるよう指示したが、半年くらいして単独では集めきれないことがわかった。個人、団体、自治体、民間企業、あらゆる方が発信し、記録を作りつつある。4月以降、様々な方が……たとえば葬祭業の方々、難しい仕事をしている方々の記録や、建設業、医師会、解体業、町内会の記録や大学としても記録があるのを見た。この記録を後世、色々なことが検証できるように、私達自身が、自分が住んでいるところで何が起こったか把握できるよう記録するということは、難しい局面を迎えている。
今日は様々な実践をしている方々のお話を伺い、密になるよう手をつないでいくための話し合いと思う。この先10-20年後、様々な方が仙台に来て東日本大震災について議論を深めるだろう。そのときに今日の議論が、日本社会・海外の中でも生かされていけばと思う。

主催者挨拶(植木俊哉さん・東北大学附属図書館長)

東北大学では今回の震災において、教職員・附属図書館等一丸となって活動してきた。
その中の重要な柱の一つが記録を構成に伝えること。それは大学としての社会的な責務と感じている。今日はMALUI連携とのことで、museum、archives、library、university、industryということだが、各界の力をあわせて、今回の震災を後世にきちっと伝える。そのための重要な取り組みに多くの方に集まっていただいて、主催者としても嬉しく思う。
東北大学では災害科学国際研究所というものをこの震災に際して作った。文系、理系、様々な分野の教員が専門的な力を結集して、この震災の教訓を科学的に分析し、次の世代に続く記録を残し提言する。その重要な課題の一つがデジタルアーカイブ化、国際連携も含め、地域・世界に震災の記録を伝えること。今日も様々な提言・説明があり、活発な議論があると思うが、この貴重な機会を市民の皆様とともに、知見を深め、震災を乗り越える第一歩・二歩、次の時代に向け力強く進むための有意義な機会となれば主催者として幸甚。さまざまなご意見・ご質疑をいただき、実り多い会合となることを願いたい。

(奥山市長は今後の所要のためここで退出)

基調講演:「MALUI連携に向けて:国立国会図書館としての役割」(大滝則忠さん・国立国会図書館長)

はじめに

この4/1に国会図書館長を拝命・就任したばかり。40年以上図書館界にいるので、会場に知り合いも多いし、新たに会う方も多いかと思う。本日の機会に、東日本大震災に際し、復興のための国会図書館の取り組みをお話しし、その後のパネル討論の中で私自身、学びたいと思っている。
はじめに、ここにあらためて未曾有の大震災の犠牲者のご冥福をお祈りし、被災された方にお見舞い申し上げる。

国立国会図書館とは?

図書館関係者は知っているだろうが初めての方もいるので、最初にその概要について簡単に触れたい。配布資料の中に案内もあると思う。その中には今日の中心テーマである、国立国会図書館としての取り組み、大震災アーカイブ事業が中核にある。それをご覧いただきながら、お聞きいただければ幸い。
国立国会図書館は現在64年目、戦後に国会に置かれた機関。6つの基本機能が国立国会図書館法に定められていて、それは当初から変わっていない。国会サービス機能を併せ持つ国立図書館として64年間、活動していた。私自身も副館長をしていて、7年振りにもとの職場に戻り、この基本機能を心にしながら仕事している。
(6つの機能とは)簡単にいえば、

  • 立法活動の補佐=国会のブレーン
  • 行政・司法各部門との連携=支部図書館制度。集めた情報を第一線で活かす+各省庁が行政活動中で作った情報を集める。双方向の機能。それを通じて資料が充実、議員の活動にも資する。
  • 情報資源の収集・蓄積機能=納本制度。網羅的収集を目標に資料を集めている。伝統的* 活字媒体だけでなく、電子情報も対象にしている
    書誌・データベースを作成する=全国書誌
  • 文献情報を提供する=国民共有の情報資源へのアクセス
  • 内外の図書館等と連携協力する=図書館の図書館、国際協力等

図書館の横の連携がないと活動は従事しない。蔵書、人的資源を総動員して一線の図書館を支援する

国立国会図書館の概況

国内の図書館としては突出した職員数等の裏付けがあるものの、NDLとしての使命を果たす上では、経営資源は不足している。しかし現代社会では様々な工夫の中で使命を果たす態度が不可欠であり、努力しながら経営資源確保に取り組んでいる。
伝統的な活字媒体だけでなく、当館の資料をデジタル化してもいる。211万件の資料のデジタル化が住んでおり、うち著作権処理の済んだ40万点はご自宅でも御覧いただける。あくまで著作権は尊重しつつ、成果は国民が共有できるように取り組んでいる。
また、インターネット資料の収集・保存(webサイトの保存)もしている。現在、138テラバイトのデータを保有。今後はこの部分が増えていくだろう。

国会図書館が受ける典型的な質問は2つある。1つは一般の国民も自由に使えるか。2つめはどこが監督機関か。1つめについては、18歳以上なら誰でも閲覧できる。2つめは、国会に属している。私の辞令の時も、衆参両院議長がお立会いいただいた。
この2ヶ月、今後どういうことに取り組むか現況を説明されつつ業務にあたっているが、最優先すべきものは2つあると考えている。両者に共通するのは、6つの機能の大前提は情報資源の収集・蓄積であるという観点。
当面の課題の1つはネットワーク資料を収集可能にすること。伝統的媒体は集まっているし、公的機関のweb収集も一昨年からはじまっている。そのため震災にあたっても自治体・省庁のサイトを、頻度を上げてロボットで収集している。今度の国会では会期中に、民間発信のオンライン資料の収集・提供のための法制度を作っていただいている。当面は無料のものに限定するが、それが当面の課題の1。
もうひとつの優先課題が、国として取り組む震災復興へ寄与するための、東日本大震災アーカイブ構築。これからはその話しをしていく。

東日本大震災への対応と復興支援を巡る国立国会図書館の取り組み

(1)国会活動の補佐
重点的に当たっている。個別の議員の要請もきているし、それだけではなく、それを普遍化して国会向けの刊行物として、関連記事80本以上のまとめを検索できるようにしている。2分に1回は現在でもアクセスされている。それから、原発事故調の活動にも国会図書館から職員を派遣し、情報提供での参加をしている。

(2)被災した資料の救済
これはMALUI連携の枠組みの中で行われていることでもある。分担という形で、担当のところに修復資料を持ち込んだり、こちらから出かけて修復ノウハウのやりとりをしたりしている。

(3)被災地の図書館支援
関連情報の収集と発信。webに支援ページを開設、現在も継続している。特にカレントアウェアネス・ポータルにおいて、図書館情報学関係の情報を提供しているが、そこに多くの(震災復興関連)情報も搭載し、使っていただけるようになっている。復興に必要な資料のレファレンスや実際の図書館資料の提供、それに学校図書館のセット貸出も、国際子ども図書館の活動として、被災地には送料無料での提供を行なっている。
国会図書館はこういう取り組みをしてきた。

東日本大震災とMALUI

『東日本大震災と図書館』というNDLの図書館調査研究レポート(No.13)がある。今年の3月下旬に刊行。その中には復興支援活動の欄があり、被災資料の救済や被災地における図書館・読書環境整備、図書館サービスを通じた被災地支援、被災地図書館支援ポータル……これはsaveMLAKの活動としてだが……この間の活動を一覧できるようにしている。皆さん全文閲覧・ダウンロード可能なのでご活用いただきたい。博物館、文書館、民間企業での活動・経験を国立国会図書館としても受けながら、取り組むべきことについて試行錯誤しつつ取り組んでいる。

諸活動を通じて見えてきたこと

1. 地域の歴史的・文化的資源の蓄積、記録・記憶の共有が重要である
2. 研究成果は出ているし、過去の関連性かもあるが、成果の前提となるデータを研究者が活用できること、市民が必要に応じ活用できることが重要である
3. 企業が一連の活動、情報の蓄積・共有や記録・記憶の共有に取り組んでおり、そことの連携が重要
MALUI連携は復興の支えとなりうる。そこの循環について、見えてきた。その必要性がより強く認識されるに至った。

「東日本大震災からの復興の基本方針」

昨年夏に定められた政府の復興方針。その中では記録・教訓の収集・保存・公開体制の整備、内外問わず誰もが一元的にアクセスでき、内外問わず情報を発信する必要性が基本方針として触れられている。NDLとしてはその中で「東日本大震災アーカイブ事業」について、システム構築を補正予算化し、取り組みをあらたにはじめている。

東日本大震災アーカイブ事業

基本理念

  • 大震災の記録を国全体として収集・保存・提供すること
  • 関係する官民機関による分担、連携、協力)分散収集・保存)
  • 国内外への発信、構成絵の永続的伝達

連携の結節点としての国会図書館

国会図書館は様々な組織をつなぐことで、国全体としてのアーカイブ構築に役立ちたい。府省庁の連絡会議、特に総務省・復興庁と打ち合わせつつ取り組んでいる。先行事業として東北大学や防災科学技術研究所、ハーバード大学ライシャワー日本研究所との連携もはかっている。今後、連携をいっそう、密にしつつ進めたい。

ポータルサイト

アクセス可能なあらゆる情報への入口、ポータルを作る。キーワードやファクトに関する検索を実現し、NDLの持っているもの、各機関の持っているものへの一元的なアクセスを可能にする。そのシステム化を総務省と相談しつつ進めている。

全体イメージ(スライドを見つつ説明)

お手元の補助資料に大きいのがあるのでそれを見て欲しいが……言葉で言えば、「様々な機関が様々な形式で持つ資料へ一元的にアクセスできるようにする」

(1)国内外の様々な機関のアーカイブが独自に収集・分散して保有しているコンテンツがある。多様な主体。多様なアーカイブ(書かれたもの、電子情報。動画、データ……)。
(2)国立国会図書館の東日本大震災アーカイブポータルから一元的なアクセスを可能にする。デジタル化資料、収集したwebサイト、デジタル情報、許諾済みの民間webサイト(無料分は多分、来年には提供も可能に)……。その他、他機関のアーカイブ等へも一元的アクセスを可能に。
(3)歴史的な災害に関わる情報に一元的にアクセスできる基盤をつくり、各コンテンツを長期にわたって保存することで、言下の復興支援等に協力する。

構築スケジュール

年度内を目指してシステム開発中。記録収集は既に既存の枠組み内でもやっているし、充実もしていきたい。webサイト以外の記録についてはまさにこれから、関係諸機関と相談しつつその記録の所在、記録へのアクセスを如何に組み立てるか、話を続けていきたい。

皆さんのご理解により、今後のMALUI連携が深まり、全体として復興の取り組みに役立つことを期待したい。

事例報告:「震災と大学:東北大学の取り組みから」(今村文彦さん・東北大学)

はじめに

私からは大学での役割を話したい。大学の役割は研究、教育、社会貢献。その中で研究と社会貢献の中にアーカイブを位置づけ紹介していく。

研究

今回の巨大地震・津波は予測できなかった。それがどういう状況だったのか? 反省を踏まえ紹介したい。

東北太平洋沿岸の歴史津波

地震・津波は繰り返し起こる現象。過去を知れば将来も知る。そこで古文書等を調べ表でまとめている。我々は1600年以降のデータを使いつつ、どういう規模の地震・津波が起こっているか評価している。
たとえば各地域での地震・津波の程度を空間的に見ると、被害の大きさを予想できる。太平洋沿岸では津波のこないところがないことがわかる。その中でも過去400年で5回、80年に1回大きな地震の起こるところもあれば、すぐ近くには年に2回しかない、しかし大きな地震になるところなどがわかる。今回、ターゲットにしていたのは宮城県沖、37年に1回大きな地震のあるところ。いつ起きてもおかしくなかったので予防防災をしていた。近くのエリアもM8以上がありえたので対策を行なっていたところ。

観測データ

歴史的研究以外にデータも見ている。たとえば地震の分布を3次元的にみると、まさに海洋プレートの沈み込む場所で地震が頻発していることがわかる。そのようなデータを蓄積・発信していた。

東北各地での津波の大きさの評価

三陸海岸は評価が大きかったが宮城県・福島県は小さかった。今回の地震の津波も三陸沿岸は大きくずれていなかった……しかし宮城・福島では大きく予想を上回り、対応が十分ではなかった。

400年の限界の克服

古文書記録の見直し

我々は理系教員が中心で、古文書の中の漢文もそのとおりの意味で捉えていた。
しかしその漢字・地名の1つずつ、歴史的背景を見ながら見ていけば、たとえば「陸奥」の中に含まれる地域範囲等を読み取っていきたい

古文書・記録の限界

実際に地上に残っている物的証拠を見ていく。仙台平野の地層を見ると、通常の地層の中に普通でないものが交じることがある。たとえば火山灰や地震による堆積物。日本の基礎科学はすごくて、こういうサンプルからいつの・どこの噴火か分かる。それはデータベース・アーカイブがあるから。その重要性がわかる。そうしてみると、ある程度広い砂の層があり、海由来であることがわかった。そういうものを調べると、仙台平野の中でもどの範囲までに津波が来ているかがわかる。今回と同じ規模の津波が869年、貞観にも来ていたことがわかる。

人は記憶を忘却する

我が国はこのような震災を繰り返しているが、その様々な知恵は忘却されていく。
個人が十分に記録を残していない/直接経験したものが忘れなくても、次やその次の世代が忘れる。そこでもアーカイブは重要。

経験を継承する

今回の様々な記録は、2011.3.11のあの時刻に起こったから……ということもある。体験を否定することはないが、それを正しい知識にするには整理もいる。普遍化して知識にする必要がある。それが災害文化を創る。東北大学・仁平先生が文化についての定義をまとめているが、アーカイブで得られた知恵・仕組みを日本、または世界の災害文化として創る必要がある。

社会貢献:みちのく震録伝:東北大学アーカイブプロジェクト 昨年は文理融合のボランティアグループとしてやっていたが、4/1に災害科学国際研究所ができ、重要な役割として行なっている

今回の震災で何が重要で何を伝えなければいけないのか?

今回の津波、第一波の写真記録を例に見てみる。海の上の様子を見ると荒々しくない。津波は位置エネルギーであり、上下に移動するだけ。海上に船でいれば流されることはない。その位置エネルギーの変化が大きな威力を持つことをこの写真は示している。
この認識が防災・減災につながる。さらに津波でも火災が起こることも映っている。
また、津波は水だけではなく漂流物が一緒に来ることも記録に残っている。このような貴重な写真・データを収集し、そこから知見・知恵を収集する必要がある。そのために震録伝ではさまざまな記録を残し、具体的には、西日本で起こりうる地震の防災対策につなげたい。今回のような低頻度・大災害でも提言ができるのではないかと考えている。

みちのく震録伝の100の基本理念

あらゆるデータを残したい。震災アーカイブとしては3.11以降の現在・未来のものだが、さらに過去のものも含んでいきたい。そして結果が具体的な対策に結びつかなければいけない。

賛同・協力機関

単独で行なっているわけではない。産官学、特に産の協力を得て実施している。

具体的な収集活動

「いまをつたえ隊」というチームを作っている。消防署・警察OB等。現地の方から専門家が見落としているデータを集めていただいている。中には職を失っている方もいるので、そのサポートの意味合いもある。今回のように、図書館の皆さんの活動とも連携し、先日にはパンフレットも作った。

これまでの公開データ

たとえば……

  • 専門家の調査・写真
  • トレンド分析……メディアが出した記事・映像等からキーワードをピックアップして、その数の変化を示す
  • 3D動画やストリートビューのような映像記録
  • 津波シミュレーション……地形と影響し合う浸水の状況を見ることができる/津波再現映像など。(地形と津波の動きの説明……)海面の振動が2日間、続いた。巨大津波は簡単には減衰しないことがわかる

新しい技術の開発:タグの自動生成

膨大なデータを活かすにはキーワードを付与して検索できることが重要。文字化されているものは簡単だが、映像等の文字化されていないものに現在、対応している。

他機関との協力体制
アーカイブに関する集まり

産官学の関係者が集まる機会はこれまでにも幾度かあった。非常に多くの参加があった。そのときにもアーカイブそれぞれの役割をいかに明確にし、継続するかが大きな論点。

アメリカ:ライシャワー日本研究所

我々は日本語データを扱うので海外発表に不得手。そこでライシャワー日本研究所との連携が意義を持つ。先方の方はすでに日本語化もされている。

関係機関によるコンソーシアム

現在、実現を予定。はやく実現したい。

みちのく震録伝は今年の3.11にリニューアルもした。今日は一部しか紹介できていない。
ぜひアクセスして、見ていただきたい。

事例報告:「Yahoo! JAPAN 東日本大震災からの考察」(高田正行さん・Yahoo! JAPAN)

はじめに

「MALUI」という考え方は今回、はじめて知った。最後の“I“、民間企業でどんなことをしてきたか紹介したい。
Yahoo JAPANの大株主はソフトバンク、ドメスティックな企業。

3.11 以前の取り組み

我々が激甚災害への備えの必要性を感じたのは2004年頃。中越沖地震があった頃であり、インターネットが普及した頃でもあるため、それしか見ていない人が被害にあってはいけない、と取り組みを開始した。顕著なのは、震度3以上の地震や津波警報が出た際には、Yahoo!の前ページに緊急お知らせを出すバナーを作った。他にも募金バナーをつくったり、Yahoo!トピックス等の運営も冗長化して、どこかがダメージを受けてもすぐに他が動けるようにしていた。しかし今回は想定を超えることも多かった。
なぜ災害にそんなに対応するのか、と聞かれることも多いが、我々はサービス業だから。それがまず基本にあった。

Yahoo! JAPAN3.11 当日~直後

東京の本社でボヤ騒ぎが起こり、裏庭に数千人の社員は対比していた。その後、70人体制の24時間チームを作り、その後の非常対応を運営した。
発生後の対応の中で大きなものとしては、Yahoo JAPANの歴史上、最も大きなページビューが出ている。天気・ニュースで普段の6-10倍のアクセスが瞬間的に出た。社内では非常対応チームと別に24時間はりついてサーバの増強等を行なっていた。
募金も、従来なら最高でも3,000万円台だった。今回は10億円を超える金額が寄せられた。テレビの報道で紹介されると爆発的にアクセスが伸び、これも担当がずっと張り付いてメンテナンスしていた。
その他に今回、今までと一番違うこととして、電力・原子力関係があった。停電・節電については報道の方が追いつかない。東京電力のwebも落ちる。Yahooに集中し、24時間東電から情報をもらって掲載・反映していた。

ネット全体がアーカイブ:

ネット全体がアーカイブと捉えて維持する活動をしていた。どういうことかと言えば、Yahoo!ニュースで大きなものについては、Yahoo!スタッフが関連記事にリンクをしている。
このリンク先にアクセスが集中して落ちることがあるので、緊急時にはYahoo!側でキャッシュしていた。
日常的にはニュースについてのみ、やっていたが、震災後一週間は、Yahoo!経由で情報を探す人のせいで自治体・企業のサーバが落ちそうになったことがあった。これは行けないと、Yahoo!のネットワークは全て大事なサイトのコピーに回した。業績機関、交通機関、災害情報、ライフライン等、大事なページのコピーを保持して、そちらを案内した。CDNを活用して実現。Contents Delivery Network。インターネット上の道路交通網のようなもの。
それを大事なサイトのキャッシュに充当していた。効果のほどだが、正確には数えられていないのであくまで目安だが、首相官邸ページが通常月間30万/月のところ、キャッシュ期間中には最高で一日50万クリックが寄せられていた大事なサイトへのアクセス保持の動きは当時、インターネット業界のいろいろなところで起こっていた。現在はこれを今後につなげようと、各自治体と災害協定を結び、災害時には自治体のキャッシュをとることを契約として行うようになっている。

メディア間での連携

非常時なので色々な連携があった。
Yahoo!のページで一定期間、NHK報道が同時流通されたり、週刊少年ジャンプの内容をYahoo!で無料配信したり。これはメディア間で、「非常時だから連携しましょう!」の電話一本で実現していた。Googleのパーソンファインダーも、Yahoo!の復興災害ページもリンクして運営していた。このように全体最適を目指す中で、写真保存のアーカイブの動きもあった。

「写真保存プロジェクト」

当時、Yahoo!カスタマーセンターに、たとえば「地図の中、衛星写真に自宅の被災前の写真があるので残しておいてほしい」と連絡が来たり、現地入りしたスタッフから日々、瓦礫の状況が変わるというような話も入っていた。Yahoo!のようなところがデジタルデータ収集の声を挙げないと手遅れになるのでは、ということでデジタルアーカイブ事業、「写真保存プロジェクト」をはじめた。
名称についてだが、これはYahoo!だということは重要ではない。誰でも簡単に利用できること、今後、官民を含めて共有化・二次利用できるようにしようということでこの名前ではじめた。ガイドラインも独自に作り、基本的には二次利用を前提にする、その許諾をいただく規約になっている。
3.22に発表し、基本的には4.20から投稿を受け付けた。中国語・英語にも対応し、地図から探したり、毎月の特集を募集して再編集した内容を出したりもしている。現状、5万数千点の投稿をいただいている。APIも公開していて、簡単にデータ連携できるようになっている。Yahoo!に連絡しなくても二次利用できる規約になっているが、報告があった分だけでも30以上の二次利用があり、大使館、写真展、API利用によるアプリ、防災教育の教材への活用等の事例があった。
今年3月にはメモリアル企画も行った。収集だけでなくどう活用するかということで、ハーバード大や311まるごとアーカイブスとも連携。当時なにが起こったか、ビジュアルで再現できるタイムラインや、アーカイブを使って個人の経験を原稿化する企画を行ったり。結果は共有できる、というプロジェクト。

最後に

MALUIのIの1つ、Yahoo!の事例であると同時に、全てをつなぐ「Internet」の「I」の意味もあるだろう。そのIとして思うこと。
まず、なかなか自治体・企業とも、デジタルですぐ使える形でデータが整っていない。Excelの書式がばらばらだったり名簿が紙だったりで、安否確認がすぐにデジタル化できなかったり。公的機関については次の災害に備え統一フォーマットを作っておくことや、手書きの媒体をどうデジタル化するかの社会的な仕組みもいるだろう。インターネットに流すソースの作成に今は時間がかかりすぎている。
また、非常時のデータは原則、フルオープンにすべき。そのために公式のAPI整備が要る。
アーカイブ、というキーワードに紐付けるなら、我々のような民間企業は倒産など、活動が継続できなくなる可能性もゼロではない。民にとって永続性は課題。それを公的機関に継承してもらえるか、その枠組も整備してほしいと感じている。
加えて、被災地の写真のデジタルアーカイブをYahoo!でやったところ、各地方自治体から「うちではできないのか?」という声も多くいただいた。デジタルアーカイブを今後どれくらいの規模で官民含め展開可能か、議論が要ると感じている。

事例報告:「誰のためのアーカイブか?:連携の前に、それぞれが何をするか?」(長坂俊成さん・防災科学技術研究所)

はじめに

今日の前提として。基本的に今の(私の)取り組みは国の防災研究機関の公的な取り組みか、はっきりしない。国の防災機関は災害が起こると必ず現地に入って記録をとったりとられた記録を研究したりしている。最後は論文・報告書として公表している。
ところが、実際に同じような形で東日本大震災に取り組んだかといえば……被害の広域・甚大さを前に、従来通りの研究者のスタンスで何か記録をしたり収集したりで、東日本大震災がいかなるものは、共有できることはないだろう、と圧倒されてしまった。今回、私たちは研究者の肩幅ではなく、被災地の防災教育・防災体制見直し・復興支援の中で、災害の記録をどのように伝えられるのか、というスタンスに方向転換した。被災地のアーカイブスの支援のプロジェクトを立ち上げたが、国の機関なので、当然、最初は認めないし予算もつかない、そもそも現地に行っても駄目と言われる。しょうがないのでNPOや企業の支援を受け、被災地のアーカイブス支援に取り組んでいる。

311 まるごとアーカイブス

私達が何をやってきたか、簡単な紹介。まず、被災直後に、被災自治体の方が自分たちの記録をとれないところで、カメラマン等を全国から読んで、物理的な被害の様相や社会的な対応、そのすべての記録作成の手伝いをした。
2つめは、けっこう被災者自身がビデオ・写真を記録していたのだが、それを避難所で消してしまう方などがいて、陸前高田市の方から「このままでは貴重な記録がどんどん失われるので集めるお手伝いを!」と呼ばれ、自治体とプロジェクトで住民に呼びかけ、津波や避難生活、復興過程の映像をとにかく提供してもらった。集めて権利処理して二次利用できるようにしてメタデータをつけて、webで公開する、という一連の活動をずっと続けている。
さらに、ここまでの話でも皆さん頑張っていただいているが、まだ「コンテンツありき」の発想。記録されたものがあるから集めて料理する、と。しかし実はまだまだ記録自体がない。記録のお手伝いが抜けている。たとえば、この1年間の中には、被災者の方がどう仮設住宅に移るか、流れてしまった無形の伝統行事や演奏を瓦礫の中で復興するか、そういった復興過程での人の取り組みを如何に記録するか。それを被災者自身が記録することのお手伝いをしている。本当に今、求められているのは記録すること自体。その支援。集めるだけでも大事だが、今はまだ記録が大事。そこに手が届いていない。
もう1つの大事な活動。みなさんはアーカイブして保存したら研究者なり誰かが活用してくれると思い込んでいるが、実はそうではない。被災者自らが記録をどう活用するのか。被災者自身がそれを渇望している。その視点がない、ニーズが見えていない。そこで私たちは地域のコミュニティと、いったい何をアーカイブスしてどう活用するかに気付いた人たちをどう支援するかをやっている。その公開・二次利用体制の整備などがいる。今、大学やYahoo!などでやってもらっているものも、たとえば被災者の方から「あっちに出したからあっちからもらって」とか言われるが、各アーカイブスは権利処理を「非営利」でやっていたり「学術」でやっていたりして、本に使おうという人が断られたりする。高田さんはご存知ないかもしれないが、Yahoo!に実際には断られている。今、岩波書店で出しているシリーズの中でも、Yahoo!さんには「駄目」と言われるし、自治体からも「学術書でも非営利でもないから駄目」と言われたりする。それが本当に人類共有の財産か?現実を見据えた本質的な連携が大切。
今日のテーマはMALUI駅前のマルイかわからないが、そこにまず「自治体」が抜けている。自治体も様々で、だいぶ落ち着いてきているが、たとえば仙台市はめでぃあテークで、となっているが、まるごとのアーカイブが縦割り行政の中で、図書館の肩幅でできるかと言えば厳しいと思う。図書館さんが本気でやるなら「ここまでは真剣にやるがここまでしかできない」というのを明示してもらわないと、他は「図書館がやらないから」となってやらない。本当に自治体のためになるか。国会図書館についても、館長が来ているので率直に言うが、このあと陸前高田市の方と復興のための電子教材の開発をやっているのだが、その中で岩手県警がとった、津波が押し寄せて気仙沼川を遡る空撮映像を使わせて下さいといったら、最初は駄目だ」と言われた。なんとか許可をもらったが今度は「二次利用は駄目」と言われる。NDLなら、関係省庁とも連携して、警察・消防・自衛隊等も含めた記録を……これをいちいち自治体や私がやっていると身が持たない。連携以前に、それぞれが本来やるべきことをさくっとやること。連携以前の問題が今はほとんど。
図書館も、今この会場も図書館員は多いが、図書館の方がこういう活動をやっているのを私は見たことがない。九州に行ったらある図書館で資料収集のポスターが貼ってあったが、私は会ったことはない。図書館の方で私に手助けを求めてきた方はこれまで一例のみ。
やるべきことをやって助成金もとって準備しつつも、それが待っていられないとのことで実績を作りたい、それで自治体の理解を得て被災地の目線で復興アーカイブスに取り組むという方もいる。しかし他には? 連携の前に、まず皆さんに一歩踏み出していただきたい。
今、311まるごとアーカイブスには写真が7万~8万くらい集まっている。自治体から数千~1万枚の単位で集まっているものもある。中にはご遺体の映っているものもあり、全部出すのではなく1つずつ人目で確認して、キーワードづけをしてメタデータを編集して……というのをやっている。そのため公開が遅れている。やっているスタッフが、やはりご遺体が写っていると滅入ってしまうこともあり、被災地で緊急雇用としてやれるかは、どこまで地域でやるか、当面こちらでやるかは考えているところ。
それから地図・位置情報はアーカイブスにとって大事なもの。それを参照しながら見られないと、個々の写真は地理・空間的な文脈がないと解釈や編集ができなくなる。地図の情報を個々のコンテンツの背景データとして使うことや、被災直後の航空写真・衛星画像、仮説住宅・商店街の地図等はコンテンツそのものでもあるので、それらコンテンツのメタデータもつけていくこと。メタデータ標準はISOにもJISにもなっている。ネット上で要求を出せば、実コンテンツを取ってきて、同じ縮尺で重ねて、さらに映像コンテンツを載せられる、そんなAPIも閣議決定されている。しかしなんでそれを使うように関係府省は進めていない? 地図コンテンツの流通についてはご相談を受けることも多い、現在の国会図書館さんのシステムの調達仕様にも入れて欲しいのだが、どうも今は入っていない。それでアーカイブとしていいの?
それと大事なのはオーラルヒストリーの記録。釜石市では包括的に、大きな時間の中でじっくり聞いてあげて映像化する取り組みをやっている。だいたい1人、1時間半くらい語られる。語り尽くせない体験が詰まっている。防災だけの矮小化した営みではない、人として地域のコミュニティのあり方、人としての根本が語られている。こういうものを丹念に記録し、公開できるように権利処理をする。
これを税金ではなく民間からの寄付でやっている。Yahoo!さんからもいままでに1億5千万円ほど寄付をいただいた。うち残っているのはもう300万円ほど。あと2ヶ月もすれば交通費も出なくなり活動できなくなることにひやひやしている。ぜひ皆さん、私が行かなくても、被災地の図書館・職員の方がやっていただければ私が出張る必要はない。ツールは提供するので、あと2ヶ月の間に、ぜひ一緒にアーカイブスの活動ができればと考えている。
利活用について、今村先生から観光への活用についても言及があったが、大賛成。実際、中越・中越沖地震で被災した新潟県柏崎市の中学生が、7月に被災地を訪れる復興ツーリズム、どう教訓を肌で感じるかという企画がある。気仙沼、南三陸、陸前高田……災害復興だけでなく自然・文化も含めて地域と交流しながら学んでいく。被災地で何がおこったかを学んでいく。
今、復興情報杭という取り組みもしている。スマートフォンを使って活用するフィールドミュージアム。そういう仕組みも作っていて、そこに文科省の事業としても採択され、全国に普及しようという取り組みをしている。
防災教育は皆さんイメージできるだろうが、復興教育について求められていることもまた多い(画面に表示)。それを支えるコンテンツが、アーカイブの活用として求められている。それにどう応えるか、真剣に図書館として考えて欲しい。ニーズは明確。活用しながらメタデータを豊かにしていくことが重要。まずはデータを被災地に返して、被災地の方が切り取られた映像の周辺・被写体の背景など地域の方しかわからないことがある。
そういうことなしに情緒的に写真を公開しても、誰になんのメッセージを発している?
それぞれの図書館で、1枚でもいい、地域としての社会的文脈を取り組んでそれも検索できるように公開する、リアルの会場の中で、被災地でやっていくということが重要。

皆さんに提案し、やっていきたいことはまだまだたくさんある。
最後に、図書館さんはまだ動いてがんばっていることもあるが、自治体さんは皆さんのポスターを知らない。まず自治体さんが自覚を持ってくれ。地方分権・住民自治ならば、まず自治体さんがしっかり災害復興アーカイブをやらないと。7月には被災自治体のアーカイブ・ネットワークづくりの連絡会議を石巻でやる。午前は非公開で話し合いを、午後は公開でシンポジウムも計画。自治体関係者の方はぜひご参加いただければ。

(休憩)

翌日のバスツアーで訪問予定の名取市長からのご挨拶(佐々木一十郎さん・名取市長)
こういったフォーラムを被災地で開催いただくことを有りがたく思っている。
明日、名取市の図書館をバスツアーで訪れる方もいるかと思う。名取市では以前の市役所をそのまま図書館に利用していて、震災で大きなダメージを受け立入禁止になっている。震災後、全国、世界中からご支援いただき、ユニセフの資金で「どんぐり子ども図書室」を開館した。今はカナダ政府とカナダ・ブリティッシュコロンビア州、カナダ森林組合の共同支援を受け、大人向けの図書室も作ろうとしている。いずれ、震災で被害を受けた図書館のかわりに中心市街地に図書館をつくる構想も持っている。
震災を受け図書館がどれだけ市民の心の拠り所だったか、よく認識させられた。こういったフォーラムを通じて震災の記録、それをどう活かすか、さらに図書館そのものについて学びあいたい。どうぞよろしくお願いします。

(以下、司会は甲斐さん)

コメント:「東日本大震災とMALUI連携:総務省の取組」(白石牧子さん・総務省)

私からは前半のご発表へのコメントとあわせて、総務省の取り組みをお話する。まず総務省の取組、その後感想を。

総務省の取組

私のいる情報流通振興課のミッションはすべての情報のデジタル化と流通。その中でMLAを通じたデジタルアーカイブに取り組んできた。「地のデジタルアーカイブに関する研究会」という研究会を立ち上げ活動し、今年の3月末に提言とガイドラインを取りまとめた。
研究会の問題意識はデジタルアーカイブの実施体制、ノウハウ・人材・予算の不足や、構築数の少なさ、アーカイブ間の連携が限定的であるという問題意識から研究会を開いてきた。MLA連携の推進ということで識者に集まっていただき、知識インフラとしてデジタルアーカイブを捉え、どうやったらそれが構築され、連携するか議論を進めてきた。
後ほど、少し概要を紹介するが、そういったものを続けながら、今後の取組としては実際にデジタルアーカイブを広めるための技術・知識・ノウハウの共有・継承のためのネットワーク構築と、財政措置を含めた拡充策の検討。
地デジ研の提言は「社会の知識インフラの拡充に向けて」と副題をつけたもので、まずは「デジタル化しましょう!」ということの呼びかけと、人的基盤・システム基盤・コンテンツ流通基盤の構築に取り組んでいきたい。また、地域の中小規模の図書館・博物館・文書館向けのデジタルアーカイブ構築のための入門資料もまとめている。現実的に事業に取り組むための手助けとなる資料。webでも公開しているのでぜひご活用いただきたい。
政府としての災害の記録と伝承についての考えについて。東日本大震災復興構想会議の中で記録と伝承について振られている。それを踏まえた基本方針の中で、記録・教訓のみでなく地域情報等のデジタル化や誰もアクセス可能な一元保存管理について政府の中で決定されている。その方針を踏まえ、総務省はNDLと連携して東日本大震災の記録の保存等に関するルール作りと、分散して存在する大震災関連情報を一元的に検索できるポータルをつくる。それが東日本大震災アーカイブ。さらに総務省としては被災地域に、ポータルサイトとつながるアーカイブを作る、運用モデル実証もしようと考えている。自治体・報道機関・大学・研究機関等がアーカイブ構築についての資料収集等の課題を整理し、最終的にはガイドラインに反映していきたい。

第一部に対する感想

そうそうたるメンバーなので感想というのも……だが。
東日本大震災アーカイブは昨年の今頃から、省内でも記録・記憶をどう残すか、デジタルアーカイブに取り組んできたものとしてどう関わるか話し合われ始めた頃であった。その過程のなかで復興方針に盛り込まれ予算もつき事業化したが、その間にさまざまな取り組みがなされてきて、色んな場面で意見交換をしてきた。
本日の報告をうかがって、一年前と違って今だから出てきた課題や、現実としての課題が浮き上がってきているように思う。それをどう解決するかは難しいところもあるし、プロジェクトを進める中で省内・霞が関内で歯がゆい思いをすることもある。長坂さんもおっしゃっているが、社会においてアーカイブに対する意識を高めることの必要性を感じている。アーカイブは普段の業務のプラスアルファになるということで、多忙な中ではすんなり受け入れられてもらえない。社会の意識をあげていくことが一過性に終わらないために、永続的に続けるために必要なのかな、と思った。

今回、東日本大震災とMALUI連携とのことだが、MALUI以外も含めて課題にどう取り組むかお話出来ればと思う。

コメント:「東日本大震災とMALUI連携」(中山正樹さん・国立国会図書館)

はじめに

国立国会図書館電子情報部はデジタルアーカイブ構築と当館システムのために昨年発足、この1月に当館全体のリニューアルを行うとともに、震災アーカイブ構築と次世代図書館システムの調査研究に取り組んでいるところ。

大震災アーカイブについて
大震災アーカイブの構築に向けて

大滝館長からも説明があったし、皆さんの報告の中にもあったので重なるところは省略したい。当館の取り組みとして、まずは大震災アーカイブシステムと、記録の収集によって国の大震災アーカイブを構築すること、そのために関係機関との連携協力を一層推進することを考えている。細かい内容については省略するが、今後の話としてはこのような格好。

現在のデジタルアーカイブ

現状のデジタルアーカイブのイメージ……現在、当館で行なっているサービスのイメージは図のとおり(スライド参照)。中心に国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)を新しいサービスとして提供。目指しているのはいつでも、どこでも、だれでも迅速に情報にたどりつけるサービス。検索サービスの提供においては当館からの提供、Google、Yahoo!等の検索エンジンからの提供、他の機関を通しての提供をイメージしている。サービスには関係機関との連携・協力は必須。
一つには館内データの統合サービスを提供。
二つには外部サービスと連携。
三つ目は大学等の外部の研究機関とも連携し、実用化・実証実験を行う場の提供準備を進めている。
四つ目として、有用なコンテンツがあるにもかかわらず検索サービスやDBを提供できない機関向けにDB構築・API実装の支援を考えている。
現状のデジタルアーカイブはこのように既に関係機関との連携が始まっている。

大震災アーカイブのイメージ

構築にあたっては現状のシステムをベースにする。効果的・効率的サービスのために今までの成果を活用する。従来のシステムを拡張することで震災アーカイブを構築する。

国全体としての大震災関連記録の収集

今までは入れ物の話だったが、ここは記録するものの話。当館の事業としても取り組んでいるが、当館だけでは不可能。国全体としての分担収集・保存を目指す。記録の範囲は様々な機関の震災前の記録、震災後の被害等の記録、今後の復興の記録という、過去~現在~未来にわたって可能な限り収集・保存したい。

大震災アーカイブの利用イメージ

ポータルを通じて様々な利用者がそれぞれの観点で、直接、あるいはAPIを利用して検索することを考えている。

アーカイブ構築に向けた連携協力

デジタル情報資源ラウンドテーブルという枠組みを想定している。各分野の専門家を集めて具体化するワーキング・グループも想定。東日本大震災アーカイブについての総務省とのWGや、MLAに関するWGも今年度はラウンドテーブルの中に位置づける。このラウンドテーブルとMALUI連携について言えば、当館が進めようとしているものとMALUI連携はテーマも課題もかなり重なっていると思っている。これらの計画を可能な限り一体的な体制で、概念整理や連携スキーム、利害調整にとどまらない、具体的に前を向いたコンテンツの収集・保存・提供を目指していきたい。

(ここでいったん、電源トラブルで記録とれず……数言程度)

国として震災の記録を後世に残すため、当館の重要課題としてこの事業に取り組んでいきたい。協力のほどよろしくお願いします……というところまでが事前に用意した話。

第一部への感想

市長から様々な機関の記録を隙間なく集めるとあったがそのとおりと思う。
今村先生からは過去の情報を今後の分析に役立てるということでそれも当然やらなければいけない。今回の事象のファクトデータを残すことが将来の分析につながる。力を入れなければいけない。
高田さんのお話のなかでは公共事業としてアーカイブを保障すると言う話があり、そのとおり進めねばと思う。
長坂先生のお話のなかでは図書館への期待・要望について、以前からもお聞きしていたが今回もそれを承知したところ。記録を作るところの支援はこれまで当館として手は回ってこなかったし、1つの機関ですべてはできないのでこのような場があるのだと考えている。
NDLがデジタルアーカイブを構築すると言ったが、NDLだけではできない。MALUI連携のような形で協力・分担してやっていくのかな、と思う。二次利用の許諾についても当館として、府省連絡会議等を設置する予定だし、関係府省に当館の事業として協力を呼びかける中に盛り込んでいきたい。

  • 討論:「東日本大震災とMALUI連携」
    • 司会:甲斐さん
    • パネリスト(向かって左から席順):
      • 長坂さん
      • 高田さん
      • 今村さん
      • 白石さん
      • 中山さん

甲斐さん
ディスカッションに入る前に。渡しはせんだいメディアテークから来ました。メディアテークは開館と同時に「3月11日を忘れないセンター」を作り、100名を超える市民が参加し、500の映像、8000枚以上の写真がある。1つずつ肖像権処理を重ねて二次利用許諾を取れるようにしてきた。そこから少し話したい。
去年5月にオープンして3ヶ月後、8月くらいのこと。当時の感覚として「もう遅い、間に合わない」と思った。たった5ヶ月だが、手からこぼれるような無力感。それが1年4ヶ月経って思うのは「たった5ヶ月だった」ということ。もっとすれば「まだ1年4ヶ月じゃないか」と思うだろう。今はまだ、記録をとる大変な現場の中にいる。できるだけ具体的に、課題解決につながるようなポイントの出せる機会にしたい。
そこで前半のプレゼンテーション、長坂さんのお話のなかではなかなかアジテートするようなかたちだったが、やるべきことを図書館も含めて考えるべきでは、ということだった。これは大事。図書館はぼくらもふくめ制度の中にいるが、何かできないかということでセンターを立ち上げた。そういうことにつながるディスカッションをしたい。

最初にそれぞれのプレゼンテーションをご覧になって、何かご意見やひとまず言いたいことなどあれば。

今村さん
話題提供の中で1つ、紹介を忘れていた。それは東北大学の記録を残すこと。東震録という名前で、職員や関係会社の方も含めて、キャンパスにかかわる方がどういう体験をしたか。留学生は強制帰国の中でどう日本を見ていたか。ちょうど今年の3.11に出版できたのだが、我々は建物が壊れ一部が使えない中でも記録を残し、本にできたことは大きな遺産と思っている。日常業務の中でわずかな記録をどうやって続けていくのか。その時間、作業の確保をどうするのかが重要と思う。

甲斐さん
東北大学とて作業の人、コストの問題は大きい?

今村さん
大きい。一番の原点は個人としてどう記録を残すか。私もそうだが書いておかないと忘れる。

甲斐さん
記録することの意識向上は確かに大きいと思う。二の次に考えられている、お金が回らない。でもお金がなくてもできることがあると長坂さんはいつもおっしゃる。今はどう?

長坂さん
お金かからずできることはいっぱいある。被災地の方が無理のない形で、ちょっと知恵と汗を集める仕組みのお手伝いさえできれば。釜石市ではいま、緊急雇用の若者にどうやればオーラルヒストリーを残せるか、その活用等のところの方法論をうまく皆さんサポートしてあげれば、専門家やプロのビデオジャーナリストよりもやっている方もいる。その仕掛けを少しお手伝いすれば。災害対応の追加業務で負担感、ということでなく、映像ライブラリーつくったり、図書館資料を使う勉強会や、公民館の社会教育のプログラムに連携して、というような。被災地の日常の中のそれの一つがたまたま震災等に関わるコンテンツだった、という風に。追加業務と思わないで、日常の中でできることはいっぱいある。

甲斐さん
アイディアが必要でモデルがあれば参考になる。そういった現場に近いところで、白石さん、デジタルアーカイブ支援ネットワークの下の方で、実証・調査項目の方と現場の支援は何か関係はある?

白石さん
これはまさに運用実証の中で体制整備にかかるもの、どういう課題があるか、現場で整理いただいて、今後続ける方の事例となるようまとめたい、という項目。

甲斐さん
あくまで調査?

白石さん
東日本大震災アーカイブ基盤構築プロジェクトの中ではあくまで調査。ただ、デジタルアーカイブ全体をどう構築するかも考えていて、その中では専門家の地方自治体への派遣とか、技術……長坂さんのおっしゃるような技術を伝えることについては震災と関わらず考えている。
また、皆さんご存知ないかもしれないが、以外に既存の制度や各省のプロジェクトも、地域の伝統文化のようなものを記録していくことができるものがいくつかある。そういったことを皆さんにお伝えして使っていただきたいな、と考えている。たとえば、今も地域情報デジタル化は特別交付税として市町村で使える。財源がある。毎年使われていて、ご存知の自治体は申請してくる。それを知らないところもたくさんあると思う。それを伝えていきたい。あくまで震災アーカイブの方は実証が目的だが、まわりの制度を伝えたい。

甲斐さん
記録の現場について、総務省から具体的にチームを送り込むような手立てまではなかなかいかない? 調査してモデルを広めるのと財源の紹介まで? 実際に……現場によって違う形で進めているのだと思う。モデルと言っても……長坂さんが詳しいと思うが、同じ形では進まない、かなり細かいコーディネートがいる。その体制づくりをどこかでだれかがしないと入力は進まないのでは?

白石さん
そうなるとデジタルだけでなくアナログを含めた震災の記録・記憶をどう残すか、というのがまずある。国として自治体の取り組みをどう支援するか、どう継続するか、というのは……長坂さん、甲斐さんに教えていただいて、お金じゃないならどういうところを国に求めているのか教えて欲しい。

長坂さん
総務省さんの事業の中で、調査・実証は弱い。平常時はいい、地方分権で国はとやかく言わない。原則、自治体が主体的にやる。ただ、今は現実的になかなか難しい。モデルで「さあこれを真似して」では弱い。実際、中間支援の復興アーカイブスの支援センターを東北において、そこにいつでも相談できる、専門家派遣やツール、プログラム事例の紹介、ノウハウ交流をしながらの実践・試行錯誤から全体としていいアーカイブができ、復興にいき……というのができれば。研究型ではない、現場を支援するサンダーバードのような組織と、柔軟な支援の体制がいる。東北三県だけでもいい。そこが国の支援を受けて自衛隊・消防の記録を権利処理して使える……というような仕組みのニーズは明確。7/6にはそこを本気で考えないと個々の市町村では難しい、というのは本当。「こんな素敵な事例があります」だと自治体はできないことも多い。試行錯誤がいまある。もっと機動的に支援しないと、なんで予算執行の9月を待たないといけないのかわからない。明日からでもできるのでぜひご一緒に。

甲斐さん
僕のイメージをお伝えすると、総務省はプロデューサー、長坂さんはディレクター。国会図書館は最終貯蔵庫、ラストリゾートの役割が強い。東北大は研究施設、Yahoo!は広報、アーカイブ意識の向上につながる情報発信とマネー・フローが接点かと思う。図書館はプレーヤーになりうるはずなのに、これだけのメンツがいて流通しないことが歯がゆい。何が問題?4~5つが連携というのではなく大きなスキームをイメージして寄せることなのかもと思うが。たとえば国会図書館さん、長坂さんは警察・消防・自衛隊の映像に言及されていたが、国会図書館がそれを集める現実性はある?

中山さん
当館が集めるとなると制度的に集める、許諾を得て集めるなどいろいろあるが、震災関連は色々なものがあって当館の既存の枠組みだけでは集められない。すべてにおいて関係機関の協力がいる。各府省の所管機関のものを集めるのに、当館が1つずつお願いするのではなく国全体としてのアーカイブの必要性を共有化するのがスキームかと思う。府省連絡会議のようなものでお願いをしていきたい。
コンテンツの収集について言えば、コンテンツそのものを持っているところ、記録を作らなければいけないところ、メタデータ作成の支援をするところもあると思うが、そこもあまり精緻なものを求めるのではなく最低限の情報を付与してもらってこちらで収集するスキームがいるかと思う。従来の図書館なら収集時に精緻なメタデータを要求するが、そうではなく最低限のものを収集して精緻化する、というのはあるかな、と思っている。

甲斐さん
メタデータ作成には関与しないわけではない、と。しかし国会図書館が現場に降りるのはものすごく難しいと思う。それよりも府省連絡会議において消防署や警察署の映像を国会図書館におこう、という声をあげるのはどのポジションの誰? 国会図書館が声をあげることもあり得る?

中山さん
最終的に国の大震災アーカイブを作るのは当館なので、直接的なアクションは取りづらい。府省にお願いをしてもらうことが重要。

長坂さん
うだうだ言っていても埒が明かない。制度がうんたらなんて説明聞きたくない。府省連絡会議があるなら、復興庁もあるのだし、図書館長が政治家でも大臣でも口説いて「大事なのだ」と、復興庁から関係府省にお願い出してもらって、公開できる映像資料や手記についても秘密のもの以外は残して、ってダメ元でも言ってみた? 言ってみないでウダウダしても仕方ない。私はずっと府省さんに言って歩いている。政治家に言っても何もしない。地元のメタデータなんて皆さんで作れば良い。地元で時間のある人に声をかけてやってもらえばいい。図書館OBだっていくらでもいるでしょう。そのかたと地域の方と一緒になってやればいい。メタデータなんて大層な、標準云々なんて言ったって付けられるのはタイムスタンプと市町村名くらい。その後の~町とかを付けられない状態、それは地域に返してつけてもらうしかない。分類体系なんて話してないで地域に返して目的別につけてもらえばいい。子育てなり福祉なりの目的にそってその視点からタグ考えてもらってつけてもらえばいい。でも総務省さんや国会図書館の仕様書にはそういった地域の多様性、メタデータのためのメタデータじゃない仕組みについてはないのではと思う。その辺はどうなのか? なっていたなら怒られるかも知れないが?
総務省や国会図書館に言っても仕方ないこともあるので、会場の方。皆さんですよ。被災地だけじゃない、たとえば地域の昭和の歴史をどう残すのか。地域のグループホームで認知症の方に思い出をどれだけ提供できるか、どう活用できるか。おんなじ。そういうイマジネーションが図書館員にはない?

甲斐さん
そう言い切らずに。
メディアテークでセンターをやっていて、位置づけは生涯学習施設なのでビデオカメラを持って被災地に行くだけじゃない、「あのときどう思った?」をお互いに聞き合ったりすることもある。そこから「僕はこう考えたけど違う人もいるのだ」ということを学んだりもする。現場に出ていって「記録する必要がある」と思って記録することも、価値判断のある批評的行為で、学び。震災の記録を「いま学ぶ場」として、どう活用するかということでメディアテークは機会として捉え得ている。オーラルヒストリーなんてこれからシンプルに集めていくと1~2万人の被災者の声を集められる気はしている。

高田さん
民間なのでいまの話は「早く決めて下さい」って話なのですが。
甲斐さんの比喩が面白かった。総務省はプロデューサーで……というような。プロデューサーと民間企業でいう場合、役割は3つしかない。1つはグランドデザイン、大きな目標の提示。もう1つは予算管理、コストの管理。3つめが大きい、獲得する数字をコミットすること、何をどこまでやるか決めること。今回の話だとどこまでになにをどうする、という話がまったくない。積み上げの話になっている。数字的な指標が出てこないと公的機関もそうだろうし民間の我々も踏み込めない。Yahoo!はインターネットが生業なのでいいが、新聞社さん等は「こんなにコストかかると思わなかった」とおっしゃったりする。ソフト的に、人間と人間がどう付き合うかの話は出ているが、システムの部分で考えるとけっこうコストのかかる代物。最初に持続可能で長期的に安いものにしておかないと何度も改修してコストが出ていく。コミットメントの部分をどう作るかが大事なのでは。

甲斐さん
システムとはインターネット上の? 全体の仕組み?

高田さん
インターネットの。軽視されているが馬鹿にならない。

甲斐さん
そこで気になっていたところ。総務省、国会図書館、東北大、皆さん「ポータル」という。これはインタフェース3つ? 国会図書館と総務省は同じ?

白石さん
総務省と国会図書館は同じ。

今村さん
ハーバードの方は米国で、学術的なポータルを作ろうとしている。ポータルもいくつか出てくるだろうが、その状態で統合化したものがいるだろう。

甲斐さん
ポータルってサーバにコンテンツが入っていないということ?

高田さん
どっちにも転びうるが、今のお話は本当のオリジナルはそれぞれが持っていて、コピーを保管するということかと思う。

長坂さん
ちょっと違うのでは? メタデータの検索だけポータルからできて、ダウンロードは各サービスに飛んでやるのでは? なければリンクかメタデータのみ。実コンテンツのデータベース構築は総務省には入っていなくて、国会図書館さんはラストリゾートになるのでは?
そうすると、市町村さんが貯めておく実コンテンツのデータベースはない。そこはオープンソースということで私たちはシステムを作ってAPIも公開して、というのをやっている。ソフトウェアの公開までやって自治体・図書館さんは無料でお使いいただける。それをどこのサーバ資源に置くのかはけっこうお金がかかる……そこの手立てはなんらない。

甲斐さん
僕のイメージではメディアテークにあるものと全く同じものが国会図書館にも入る……ということかと思っていたが、その書誌情報だけが国会図書館に行く?

中山さん
大震災アーカイブのイメージについては私の資料の中にも出しているが、当館自身としてもコンテンツは集めるし、現状で色んな機関でアーカイブしているものはまずはメタデータ、ポータル側で収集して、収集したものと他機関のものはメタデータによって検索できるようにする概念。ラストリゾートなのは確かだが、コンテンツ自身、メタデータどちらも集めていきたい。最終的にはその機関が、Yahoo!さんでお話のあったように未来永劫の維持が困難となれば、当館がそれを永続的に出すことも考えている。

甲斐さん
では最初に国会図書館が集めるコンテンツは独自に集める?

中山さん
制度的に集めるものは震災に限らず集める。色々なアーカイブで集めているものはそのままお願いしたい。そこから漏れたもので保存すべきものは当館で収集する。最終的には当館で全部見られるようにする。

甲斐さん
Yahoo!さんにあるものは「もう無理!」となってから入れる? 今「預けます」と言ったらもう集める?

中山さん
許諾によって集められるので、今許諾いただければ集める。

甲斐さん
メディアテークが「国会図書館さん預かって」といえばいい? 国会図書館さんから「集めます」とはならない?

中山さん
どっちがどっちになるかはわからない。サービス停止時に他から出す、ということで今現在はどっちでもいいのではと思うが。

長坂さん
あとは実務的な問題で、Yahoo!さんなら静止画ならいいだろうが、収集ポリシーについては別に考える必要はあるだろうが、物理的にダウンロードできるようにするのは、うちもシステム作らず国会図書館に預けていいならうちはどんどん国会図書館さんに寄託したい。そこはどうなの?

中山さん
今、当館で震災アーカイブを作って、電子書庫も用意する、かなりの容量はありそう。ただ、保存して見せるといってもただ検索出来ればいいというものではないのではないか。アーカイブするのをどこにするか、ポータル的に見せるのはどこか、というのは色々あっていい。それ自身、協力してよりいいものにすることもしていきたい。

長坂さん
見せるだけでは困る、ダウンロードして二次利用できるところまでやって欲しい。

甲斐さん
メディアテークは市民から「こう扱います」というのを最初にアナウンスして集めないといけない。今はおおまかに説明しているが、そのときに、オーラルヒストリーの映像を何年の年限で公開するかとか非公開/公開の設定等のガイドラインを最初に決めておかないといけない。そこがないので今は危ない。そのガイドラインくらいは作っていただければと……司会ではなくなっていますが(笑)

今村さん
違う視点から。なぜアーカイブが必要か考えたい。東日本大震災の記録を集める。それは今後の災害にとって非常に多くの学びができる、というのが原点。今後もまだまだ自身は活動記。日本海側、西日本、いつこのような状態になるかわからない。東日本は多くの資料と解析があったのに2万名の犠牲者が出た。何が足りなかったかを考えている。
具体的には、自分の地域でこのような事態がおこることへのリアル感がなかった。地震も津波も「自分たちのこの地域で」というのを考えて、どこに逃げて……というのを考えていた方が少なかった。ぜひアーカイブを作って、他の地域でも見て具体的な備えに役立てて欲しい。そのために皆さんに知恵を出していただきたい

甲斐さん
ここで締めに入った方が良さそうなので、次はプロデューサーの白石さん。

白石さん
立場に基づく回答をすると縦割りになってしまうので個人として発言したい。
総務省がプロデューサーでいいのか、という大前提の問題がある。国として記憶・記録を残すというときにここに座っているのが私でいいのか。発表のときにも言ったが、正直、霞が関内でもこのことへの問題意識はかなり低い。こういう場に出て話を聞いていない方に課題・問題の重要性を伝えることが、ずっと続けるという意味でも体制としても重要とあらためて思った。
私どもは既にやっているということで復興庁さん含め、本気でやりましょうと嫌われながらも言っている。
皆さんの後押しももっともっとあると、国として震災の記録を残して、活かしていくのに大事と思う。

甲斐さん
引き続き中山さん、最後のコメント等あれば。

中山さん
今までの話でほとんど言っているが。「~がやるべき」と言ってもそれには色々なパワーもあるし、そこができるはずと言っても実際の展開には時間もかかる。ただ、大震災アーカイブについては記録されず消えることが一番の問題。今までの枠組みではなくて、特別なアクションをとることが必要と思うし、連携協力も概念整理では済まない、動く必要がある。震災アーカイブも「こんな形でいいのか」というところもあるだろうが、より早く作って提供するための最善の方法をとっているつもり。
今後の話は、省庁も含めた色んな話があり、この場ででてきている問題・課題を関係機関に協力して働きかけることがいるかと。

甲斐さん
一歩踏み込んでお願いします。高田さん。

高田さん
Yahoo!のようなインターネットメディアにはいろいろな活動を伝播することが役割と思うが、事業者としてのYahoo!はもうその時機を過ぎたとの判断をしている。事業者としては数字の成果を一点集中して出さないといけない。その意味ではeコマースを使った被災地の事業化支援を昨年からやっていたが、いったん絞って石巻に支社を作ってそこに集中する方向に変わってきている。本当の意味でプロデューサーが決まってコミットメントの方向が出た後には、皆さんご自身の持分に集中するだろう。はやくそのプロセスに入れるように全体の流れが加速すればと思う。

長坂さん
会場の皆さんともっと議論したいことがある。国は国でがんばってほしいところもあるが、そうなると会場の皆さんは一歩も踏み出さないで終わる。それで終わっちゃ駄目。これは国側の問題ではなく、皆さん、今日は一般論ではなく地域住民であり職員である図書館の皆さんが、どんな一歩を踏み出せるか考えないと、日本の社会は良くならない。国はそんな感じ。高田さんのいうように絞ったコミットメントも重要だろう。しかし皆さんにはまず一歩を踏み出していただいて……ぜひ今日を機会に何か小さな一歩を踏み出せればと思う。

司会総括(甲斐賢治さん・せんだいメディアテーク)
図書館の人に向けて。なんとなくこのおはなし全体、農業と似ている。農業は産業だが、文化の側面も大きい。しかし産業としてみると1つずつは小さいのであまり重視されない。今の話はスーパーマーケットと農家の物流の話のよう。農家は肥やしまいて育てて作る。小さい農家がしゅくしゅくとやっているところを見逃してしまうことに似ている。僕らは農家さんに近いところで、アーカイブ文化・歴史文化を考える場にいて、すごく難しいなあと思う。
最後に、「人は後ろ向きになって前に向かう」という言葉がある。歴史を見ると人は前に向かう、ということだろう。アーカイブをしていくことは前に向いている行為。被災地にこそ必要。長坂さんは話していなかったがアーカイブを事業化して現場に雇用を産むことも開発しないといけない。課題は満載と思う。
最後に、大滝国会図書館長から一言。

大滝館長
館長としては、これから国として、大震災アーカイブを進める中で、その課題、取り組みについていっそう、様々なご指摘を受けて、強い気持ちで取り組んでいかねば、という思いを強くした。
また、一人の市民として議論を聞いた感想として。様々な課題が出たが、長坂さんから激しくご指摘のあったように、具体的に消防・警察・自衛隊が業務上撮影した映像を国のアーカイブにどう位置づけるのか、保存され国民の利用に耐えるものとして保持できるのか、という課題は明確にある。
そのときに、短時間の時限的な組立の中で、明日からすぐ二次利用を含めた保存を……といっきに行けるのか。それはそういう働きかけを国会図書館がやるべき、というご指摘を受けている。市民目線から言えばどこまで、どういうタイムスケジュールで可能なのか、どういう手順ですればどの時点で可能になるのか、ずっと駄目なのか。
一方で仕事として復興大臣にお会いした際には大臣も大震災アーカイブを国会図書館に大いにやってほしい、省庁が躊躇しているなら大臣が号令を出すという激励もある。
また市民目線に戻れば(笑)、国としてのアーカイブの中でどういう手順をすれば可能なのか。国全体の情報をどう、図書館の立場で実際に持つ、持たないにしても持っているところがあればつなげるということに働きかけることが求められている、というのが討論を聞きながら感じたところ。
まだまだ、国全体の付き合いの中では国立国会図書館は立法・行政の壁も……あるといえばあり、ないといえばないのだろうが、国としてどう取り組むかが問われており……これから館長の立場に戻ると、突っ込まれると難しいところがありながらも誠実にお答えしようとするから歯切れも悪くなるところがあるのだが、そのあたり新幹線で考えながら帰りたい。

閉会挨拶(佐藤潔さん・図書館総合展運営委員会委員長)

長時間に渡りありがとうございました。課題を残し、課題を浮き彫りにしたと思います。
今日の内容はUSTREAMで記録し、電子書籍としても発表します。
今日の企画・運営はカルチャー・ジャパンという会社。図書館総合展をやっている会社で、今年も11月にパシフィコ横浜で3日間、フォーラムがあります。ぜひご参加を!

以上。