学術電子教科書・教材はこうなる-新しい流通と取組について

学術電子教科書・教材はこうなる-新しい流通と取組について

  

日時:2012年11月22日(木)15:30-17:00
場所:第1会場
主催:国立情報学研究所
講師:
 入江伸さん(慶應義塾大学メディアセンター)
 井上仁さん(九州大学情報基盤研究開発センター学習環境デザイン研究部門 准教授)
 堀真寿美さん(帝塚山大学TIES教材開発室)
 長丁光則さん(大日本印刷株式会社教育・出版流通ソリューション本部)
 武田英明さん(国立情報学研究所情報学プリンシプル研究系教授)
 山地一禎さん(国立情報学研究所学術認証推進室、コンテンツ科学研究系准教授)

概要:大学における電子教科書・教材は、どんな形で作られて利用できるようになるのか?そのブレークスルーに挑戦する議論を行います。
フォーラム詳細:http://2012.libraryfair.jp/node/886
  

   

フォーラムの内容

  • 本セッションの位置づけ 山地一禎さん(国立情報学研究所学術認証推進室、コンテンツ科学研究系准教授)
  • 各プロジェクト事例紹介
    • 「電子教科書・教材と大学図書館」入江伸さん(慶應義塾大学メディアセンター)
    • 「九州大学における電子教科書・教材の状況」井上仁さん(九州大学情報基盤研究開発センター学習環境デザイン研究部門 准教授)
    • 「CHiLOプロジェクトの新たな取組」堀真寿美さん(帝塚山大学TIES教材開発室)
    • 「大学区附属図書館の新しい役割-大学図書館の授業教材と学習支援への関わり-」長丁光則さん(大日本印刷株式会社教育・出版流通ソリューション本部)
    • 「識別子が作る学術の新しい世界」武田英明さん(国立情報学研究所情報学プリンシプル研究系教授)
  • パネルディスカッション:個別のプロジェクトから連携に向けて
      

その他の記録

  
  

本セッションの位置づけ 山地一禎さん(国立情報学研究所学術認証推進室、コンテンツ科学研究系准教授)

各プロジェクト事例紹介

「電子教科書・教材と大学図書館」入江伸さん(慶應義塾大学メディアセンター)

  • 慶応は電子学術書プロジェクトを行なっている
    • 詳細は公表している文献を参照ください
    • 今日はそのプロジェクトでどんなことを考えているかお話する
  • 大学図書館、出版社、利用者を集めるプロジェクト
    • 出版社は良い本をつくるが、それをどう読まれているかは知らない
    • 出版社の前に学生を連れて行って、どういう本が読まれるのか、どう利用しているのかを話す
      • テキストは検索する、OCRがないとだめ、など
    • その中で大学図書館は何ができるか?
  • 先生が本を刷って、それを4年間使うということはあまりない
    • 先生がどう教材を作り、学生がどう利用するのか、その仕組みをはっきりさせたい
    • 図書館は、教材庫になるのか、集金の役割になるのか
    • 大学図書館には編集・出版の機能を担うことはできるのか?
  • 大学図書館はどういう機能を持つのか
  • 大学図書館と出版社にはどういう違いがあるのか
  • とにかく成功事例を作っていくしかないと思い、プロジェクトを進めている
  • 電子書籍はぼくらに特権がなくてサービスできない
  • 教育の基盤の問題
  • どうやったらこれからの教育を上手く展開するために、どうやっていけるか、ということを考えている
  • 詳しくはウェブサイトを御覧ください
      
      

「九州大学における電子教科書・教材の状況」井上仁さん(九州大学情報基盤研究開発センター学習環境デザイン研究部門 准教授)

  • 九州大学におおける電子教科書、教材の状況
  • 高等教育における電子書籍
  • 大学の授業はどういうもので構成されるか?
    • 講義
    • 板書
    • スライド
    • 資料
    • 教科書
    • 参考書
      • 授業前・授業中・授業後の使用範囲がある
      • 教科書・参考書は授業前、授業後でも使用される
  • 九州大学は4,800科目の授業があるう(シラバス掲載分)
    • 授業で教科書を指定しているのは17%、うち図書館に蔵書があるのは11%
    • 低学年時の授業に限れば、割合は増えるが、全体の3割弱しかない
  • 大学の授業で教科書を指定しない理由
    • 自分の授業に適した教科書がない?
    • 他人が作った教科書を使用できるか?
    • 学生の負担を考慮し、教科書を参考書にするなどの措置?
  • 研究において一人前になるには、査読誌にジャーナルを載せること
    • 一方、教育者として一人前になるには、授業の教科書を自分で書くこと
    • それが難しいので、板書などを行う
    • 現在九州大学で行なっているのは、授業の板書やスライドを教科書にしていこうという試み
  • 授業を公開する試みは活発化しているか、本当に再利用されているか?
    • あまりされていないという実態
    • やはり他人の授業はあまり利用できない
    • 他人が作成した資料を使うのは教員の怠慢?
  • 電子書籍の教材は、当然それを読む端末が必要
    • パソコン教室にあるパソコンだけでは、どうしてもその利用が限定される
    • 一般教室でもラーニングマネジメントシステムを利用しようという風潮がある
  • 九州大学では、学部に入学する1年生全員にパソコンを購入してもらう
    • 教育用の無線LANを増強
    • LMS(ラーニングマネジメントシステム)のシステム強化
    • 教室で電子教材を見れるような環境に
  • ICTによる教育支援
    • 昨年教材開発センターを実施
    • 附属図書館に併設
      • コンテンツは図書館が提供するべきではないかという考え
    • ICTを活用した教育を検討し、普及する
      • エデュケーショナルテクノロジー部門、コンテンツデザイン部門、オープンエデュケーショナルリソース部門
    • 公開した教材を利用した学習の場をつくる
    • 学内プロジェクト
      • 医療系の3D教材の開発
      • インタラクティブ教材の開発
      • iBooks
        • 例)骨のモデルデータを組込み、どんな角度からでも観察できる
  • 大学における教材開発はこのような動きではないか
      
      

「CHiLOプロジェクトの新たな取組」堀真寿美さん(帝塚山大学TIES教材開発室)

  • NPO法人CCC-TIESの立場
  • 米国における大学生の電子書籍購入率:9%
    • 電子版は100ドル、印刷版は115ドルであまり変わらない
    • 結局電子版を購入しても印刷している
    • 電子教科書はおしゃれではなく、ステータスシンボルでもない
    • 電子教科書の状況は厳しいのが現状
  • カリフォルニア州
    • 法律で、大学生の電子教科書は全て無料で提供する
    • カリフォルニア州はクリエイティブ・コモンズでデジタルコンテンツを取り揃えている背景
      • だったら電子教科書の優位性は何か?
      • 紙の教科書を無料にすればよいのではないか?
  • オープンエデュケーション
    • 大学の講義公開だけでなく、オンラインテスト、掲示板などを提供
    • 150万人が参加
    • 1人の教員が10万人を教えるという状態
    • 米国約2,000の大学の正式な単位として出すというプレスリリース
    • 受講は無料だが、単位認定の際にはお金を支払わなければならない
  • NPO法人の活動
    • CHiLOブックプロジェクト
      • 教科書だけでなく、学習する仕組みそのものをパッケージング
      • 1分程度のレクチャービデオを組み込む
      • 教育・学術リソースやeラーニングリソースなど、学認eリソースにリンクする

(デモ動画再生)

  • 電子書籍から、学認にアクセスし、動画再生や教科書、さらに課題提出やアンケートなど全てを行える
  • 電子教科書と何が違うのか?
    • 大学生だけが対象ではない
    • 教科書を提供するのではなく、教育の機会を提供する
  • CHiLOブックは全ての人に教育の機会を提供する
    • 大学に通っていない人が目的
  • CHiLOブックは便利な教科書ではない
    • 教材でもない
  • CHiLOブックは1人の教員が100万人を教えることができる教育基盤
    • 教科書ではなく、大学教育を電子書店で購入するようになるのでは
    • 大学教育そのものを図書館で借りるようになるのでは

  
  

「大学区附属図書館の新しい役割-大学図書館の授業教材と学習支援への関わり-」長丁光則さん(大日本印刷株式会社教育・出版流通ソリューション本部)

  • 大学の図書館はこれからどういう役割を持っていくべきか
  • アカデミックビジネスは丸善株式会社が大半を行なっている
    • 丸善の提案の中身だと考えてもらえれば
  • 千葉大学アカデミック・リンク
    • アカデミックビジネス・リンクの立ち上げと運営に大日本と丸善が協力している
    • コンテンツの提供なども
    • 文科省の補助金もあり、今後3年間で創りあげていく
  • 見えてきた課題
    • 電子契約のための権利処理
    • どんな分野から電子化を行うか
    • コンテンツの提供と調達方法
    • 教材開発センターの必要性
  • アカデミック・リンクセンターは教材の開発センターそのもの
    • 図書館の中に大学の窓口、代表としての窓口を持つのが効率が良い
    • 図書館が授業、教育に対してどういう立ち位置で協力していけば良いのか
    • 図書館の蔵書と講義で使用される教科書は、もっと関係をもつべきでは?
  • 指定教科書は少なくなっている
    • 東京大学でも9割は使っていない
    • 本が授業で使われなくなっている
    • 利用されないわけではなく、参考書に大量に掲載
      • ここをアシストする必要がある
  • 図書館が上手く連携すれば、新しい役割をもてるのでは
    • その過程で、コンテンツのデジタル化は避けて通れない
  • 今年の8月から始まっている本郷の新図書館プロジェクト
    • 地下図書館をつくる計画
    • そのなかに電子図書館計画がある
    • シラバスの情報、蔵書、図書館のノウハウをリンクさせる
    • 新しい教材の環境をつくっていく実験的プロジェクト
  • 教科書がどんな状況にあるのか
    • 指定教科書が絶版になり、手に入らない状態が起きている
    • 学生が教科書を買わなくなっている
    • 必修科目で指定教科書を買った人が22%という例も
    • 改訂が長期化している
    • ロットで価格が決まるため、長期に使用する目的で作成する
    • 新しい情報を反映しにくい
    • 絶版されたものを利用したい際に電子化という解決策
    • 先生方は電子化に期待している
  • メディアとして教材がどういうものになるのか
    • 教科書を一冊指定することが少なくなっている
    • 物理化学の基礎的教科書3冊
    • 先生方は部分的に利用したいという思い
    • しかし、全て購入するととても高価
    • 電子にすれば解決するのではないか
  • 既存の刊行物、学術書籍、を電子化して利用する要望が具体化している
    • 大学電子書籍研究会をたちあげた
      • 共通の課題認識を持とう
      • 著作権をどう考えていくか
      • 教材のプラットフォーム、流通をどういう形で発展させるか
      • 大学評価機構や文科省も含めて議論を進めた
      • 提言をまとめて報告書を出す予定
          
          

「識別子が作る学術の新しい世界」武田英明さん(国立情報学研究所情報学プリンシプル研究系教授)

  • 電子コンテンツの流通のインフラについて
  • 全世界の論文数の変化
    • 学術論文はどんどん増えている
    • 10年で論文数は4倍になるのでは?
    • なぜ論文が増えるのか
      • 論文の出版を止める仕組みがない
      • 電子化されたために、どんどん量産される状態に
    • 出す方も読む方も大変
    • なるべく機械に手助けしてもらうという考え
      • 何が書かれているのか
      • 誰が書いているのか
      • 機械的に当てたい
    • DOI:コンテンツ
  • DOI(Digital Object Identifier)
    • 識別子からデジタルオブジェクトが存在するURIに変換するサービス
    • DOIのURL化
    • ミッシングリンクの防止
    • 古くなったURLをサーバーで書き換えてマッピングする
    • 論文の管理に利用されている
  • ジャパンリンクセンター(JaLC)
    • CrossRefとDOIの2つの機能
    • 2012年11月から開始
    • ジャパンリンクセンターは日本の組織なので、どんなコンテンツに付与するかを自分で決めることができる
  • ORCID
    • 世界中で著者、研究者を一意に同定する仕組み
    • 2012年10月からサービス開始
    • ORCID IDを付与される
  • 何が変わるのか
    • 出版社に依存しない出版が可能になる
  • そもそも出版とは
    • 入手性
    • 永続性
      • 一度出版すると存在し続ける
    • 発見性
      • 本を入手する仕組み、図書を流通させる仕組みがある
      • 図書館に行けば手に入れられる
    • 一貫性
      • 出版界が出版物を定義し続ける
    • これがアナログ出版の世界
  • デジタルの場合
    • 入手性:DOI
    • 永続性:デジタルプリザベーション、DOI取得時の要請
    • 一貫性に大きな可能性がある
      • 内容の一貫性は、今まで出版社が担保していた
      • 誰が出版するのか
      • これからは、大学やリポジトリがその役割を果たす
      • 書籍や論文にとらわれない出版が可能
  • 本というメタファーを借りた何か
    • 固定的な形式であることの制約が少ない
    • 小さな形式でも、図1枚でも可能
  • 出版そのものの制約はきれいに消えた
    • 書籍や論文に依存する出版をしなくて済むようになった
    • 望ましい機能はまだたくさんある
    • 誰でも出版できるようになると、混乱が生じる
    • 大学の仕組みを利用して、その信頼性を担保できるのではないか
      • 大学の組織や、先生など
    • NIIも大学を繋ぐシステムを用意することによって、新しいデジタル出版のプラっとフォームができるのではないか
    • 新しいプラットフォームの可能性をぜひ考えていただきたい
        
        

パネルディスカッション:個別のプロジェクトから連携に向けて

  
(以下敬称略)

本当に電子教科書が必要か?

山地/
韓国は小・中・高全て電子教科書という取り組みがある
日本は遅れているが、本当にひつようなのか?
  

入江/
ちゃんと読む本は紙がデフォルトという考え。調べるのは、検索したいから電子が良いというのがほとんどの学生の意見。学生はまだまだ紙じゃないの?といっている。そこからどう電子にシフトしていくのか。
大学図書館は遠いところにいて、教育にからまない。教育の話をすると怒られることがある。では何をするかというと、大学出版会と絡むことがある。今日は折角いるので、一言お願いしたい。
  

大学出版会の方/
我々は先生方が作った書籍を出版する役割を担っている。今後は紙を出版するだけではやっていけなくなるだろうという危機感がある。いかに本屋さん家業から脱却できるか。慶応でも突出したキャンパスがあり、そこでは大学が学生から教材費を徴収し、大学が提供する形で、電子教材の配信などを考えている。著作権処理や、いかに電子化をサポートするのかといったことをいかに取り組んでいくかという現状にあると思います。
  

入江/
法学部の学生は、特に本を持ち歩きたくないという。また貧困になりつつあるので、できるだけ本を買いたくない。そういう状況で、電子にシフトしつつある現状だろう。学生はノートをスキャンしてDropboxに管理しつつあるので、紙が基本でも、利用が電子になりつつあるのだろう。
  

長丁/
電子の教科書で勉強ができるのか?依頼があり絶版の教科書を電子にして配布した。ハードコピーをとれる仕組みにしたら、多くの学生は自宅や学校で印刷して利用している。自分でも読もうと思ったが、電子ではやはり勉強ができない。
先週、ある学術出版の人と話したら、今の本をそのまま電子にしても、効率良く勉強できないという話があった。もともと学術専門書であり、多くは専門書を教科書として利用している。授業で使う機能を持っていない。付箋やマーカーなどもあるが、効率良くしようと思った仕組みが効率悪くなっており、教育効果としてはいかがなものか。
教育する側と教わる側の状況があり、やはり教材は必要。こういう時代なので、在り方そのものから考えなおしたい。先ほど紹介した研究会では、そのレベルから教材をどう使うかを議論している。そういう意味で、ビジネスモデルが見えてくる。
何らかの後ろ盾がないと、クリエーションもビジネスモデルも生じない。どんなベースの上なら動くのか。そういう所を今一生懸命考えています。
  

山地/
この状況は電子教科書にとってチャンスだと思うが。
  

井上/
大学が教科書があって授業がある。文字だけでも不可欠で、動画や色々なものが必要。電子書籍を購入するが、EPUB自体はいろんな図を見れるが、電子書籍リーダーでは対応していないものもある。電子書籍は文字だけのものなのか?大学での教育は、講義や、文字や動画などすべてのものを含んで教育なので、それを提供するのが教材なのではないかと考える。そういったことが今後議論されるのではないか。
  

山地/
ボトムアップのニーズによる電子教科書の展開がある。良い環境を提供しようという動きもあるが、トップダウン的なアプローチも融合した所に新しい展開があるのではないか。大学のインフラとしてシラバスから電子教科書があり、最終的には学生の評価に繋がらなければいけないと思うが、トップダウン的なアプローチとしての電子教科書はどのようなものがあるか。
  

井上/
例えば熊本大学では、シラバスのリンクをクリックすると附属図書館の所蔵情報に繋がるものがある。それがラーニングマネジメントシステムと連携したり、教員データベースと連携するなど、大学の教育は連携が必要だが、縦割り組織で難しい現状がある。それをうまく出来るようになれば。
  
山地/
今後はそういったシステムもクラウド化されてアウトソースする。アメリカでは各システムを標準化するための仕組みがつくられつつある。日本ではどうか。
  

長丁/
昨日、そういう話をしたことがある。日本の産業が20世紀後半に起こってきた電子教科書などが、縦割りの仕組みで上手くいっていない。それが成功しているのがアップルなのであり、日本は産業の縦割り構造で上手くいかない。政府もその様に認識している。その原因は大学の教育にあるのではという考えがある。大学の先生と会うが、30年たっても何も変わっていない、どうなっているのだろうと思う。一部の若い先生もいるが、教えたい内容の教科書がないという話もある。
シラバスの分析を行なっているが、そこに出ている教科書で、工学部の基礎に統計数学というものがあるが、この教科書のイントロが政治哲学のジョン・ロックからきている。統計数学は政治哲学を理解するためであるとはっきり書かれているのがすごい。本郷は4,500の講義をやっているが、その連携がとれていない。どうしても近いフィールドの学問でとじこもってしまう。今新しい教材を求めている先生方からすれば、そこを素材ベースで新しい教材を見つけ、利用できれば良いのでは。それの動きが顕在化されているのがここ2,3年だと思う。
  
山地/
実際に電子教科書の要求はあるのか?
  

堀/
あまりない。学生がモバイルの状態にないこともある。
中々まだ、実際に使えるeラーニングの教材もない。ここで電子教科書が出ても、切り口が変わっただけで、結局eラーニングの人が味わった苦しみを繰り返すのではないか。
  

入江/
ライフスタイルの話があって、大学図書館にはOPACがある。OPACだけなぜコミュニティにならないのか、全文にならないのかという話がある。新しい所は出版があるので、古い部分でなんとかできないか。
大学図書館には電子で欲しい。もし良ければ学生は買う。出版社側からのビジネスモデルと、学生の要求がまとまれば良いと思う。
  

武田/
自分も講義を行なっているが、電子化というのは、自分たちも変わらないとだめなのではないかと思う。
講義は一人ひとりの教員の聖域であり、ブラックボックス。私立大は大分手が入るようになったが。シラバスを電子化し、透明化し、同じ事を教えるなら同じ教科書を使うとか、教員側が変わらなければこのモデルは上手くいかないと思う。これまでの状態を変えたくないといっても、それはもう仕組みとして難しい。これは大学図書館の講義そのものの話だと思う。
  

山地/
最終的にはファカルティ・ディベロップメントになり、大きな話になるが、その通りだと思う。
入江さんの話で、今我々は著作権の話ではなく、教育環境の話をしているのだとおっしゃっていた。インフラの話をたくさんされたが、しかし著作権は避けて通れない。専門の方にお話を伺いたい。
  

日本著作権教育研究会の方/
今何やろうとしても、著作権が邪魔して進めない。著作権になんでもお金を払っていると、とてもじゃないがペイできるものは作れない。やはり、大学である程度の費用負担しながら、全体で、ブランケット契約というものを各会社と結びながら、先生方が著作権を考えずに教材を作る環境が必要。コンテンツなどの前に、超えなければいけない課題があるのは非常に残念。電子教科書や、サーバーに蓄積する場合は、著作権法35条のガイドラインを超えることになる。そこをクリアするために、大学が結集していく必要があるのではないか。
  

長丁/
著作権フリーでやりたいという話もあったが、自分は出版社の社員なので上手くいかない。35条は電子になって降りかかった問題だが、法律なのでどうしようもない。順守するしかない。だから、払おうということになった。
いろんな教材をつくられているが、どれも外に出せない。著作権をクリアできていないから。しかし、払う気がないわけではない。払う方法が整っていれば良い。
市場の1000億の中で、流通コストや、著作権など全てまかなう仕組みを考えたい。
大学は今市場が4兆円で、その半分を文科省がまかなっている。そのあと5%くらい負担しても良いのではないか、という意見などがある。
  

山地/
最後に、NIIとしてどうするべきか。
  

武田/
教材なら教材を、流通させるコミュニティを育てていくことが、良いステップなのではないか。
  

山地/
コンソーシアムが4月ごろから始まるので、今日の議論だけでなく、ぜひアクションプランを考えていきたい。
  
  
  

(執筆:平山陽菜)