日本のナレッジベース構築に向けて-電子リソース管理データベース(ERDB)プロジェクトの現状と将来展望について

日本のナレッジベース構築に向けて-電子リソース管理データベース(ERDB)プロジェクトの現状と将来展望について

  

日時:2012年11月22日(木)10:30-12:00
場所:第1会場
主催:国立情報学研究所
講師:
 田邊稔さん(国立情報学研究所学術コンテンツ課)
 片岡真さん(九州大学情報システム部)
 上野友稔さん(電気通信大学附属図書館)
 伊藤民雄さん(実践女子学園情報センター)

概要:電子リソース管理で苦労している図書館員や利用者サービスの拡充を狙っている方必見です!
フォーラム詳細:http://2012.libraryfair.jp/node/884
  

  

フォーラムの内容

  • 「電子リソース管理データベース(ERDB)プロジェクトの概要・課題・展望」田邊稔さん(国立情報学研究所学術コンテンツ課)
  • 「ERDBと国際連携:GOKb(Kuali OLE)とKnowledge Base+(JISC Collections)の動向」片岡真さん(九州大学情報システム部)、上野友稔さん(電気通信大学附属図書館)
  • 「国内データベースの現状とERDBとの連携について」伊藤民雄さん(実践女子学園情報センター)
  • パネルディスカッション「今後の展望に向けての問題提起と提言」
      

その他の記録

挨拶 大向一輝さん(国立情報学研究所 コンテンツ科学系准教授/コンテンツシステム開発室室長)

  • ERDBは、今NIIと大学図書館が一から作っている機関で、機関リポジトリ以来の一大プロジェクトだと思います
    • 電子リソースは今後増えることはあっても減ることはない
    • ユーザーに対するサービスをいかに高いクオリティを保つか
      • 対応は様々
      • 上手く発信できていないのではないか
  • 今どのように管理するか、対応するかが試されている
    • より良く、解決するには、個別の活動を越えた情報共有が必要
    • ERDBはその一つ
      • 様々な試行錯誤があったが、今の世界を認識し、いかに効率の良い管理を行うか
      • こういう場でNIIが発表するのは、完成している場合が多いが、今回のNRDBはそんなことはなく、走りながら作っている
      • 作って壊して、の真っ最中
      • 今回はプロセスの一環であり、プロジェクトの一員として考えて欲しい
      • ディスカッションに参加して頂ければ
  • 図書館とユーザーのコミュニケーションだけが、今後の学術情報に対応する唯一の方法
    • ぜひこの場でコミュニケーションを
        
        

「電子リソース管理データベース(ERDB)プロジェクトの概要・課題・展望」田邊稔さん(国立情報学研究所学術コンテンツ課)

  • ERDBの概説を行う
  • ERDBリテラシーチェック
    • ERDBという言葉を聞いたことがない方
      • (会場)4,5名が挙手
    • ERDBとERMSの違いが分かる方
      • (会場)ほとんどいない
    • やはりちゃんと説明しないといけない
        

ERDBとはなにか

  • ERDBのベースとなる考え方
    • ビジョン(実現すべき未来)
      • 全ての学術資料を検索可能に!
    • ミッション(達成すべき使命)
      • 使命の1つとして、電子リソースの情報を網羅的に収集し的確に提供する
    • ストラテジー(実施すべき戦略):3つのレイヤーがある
      • 書誌レイヤー
      • KB(ナレッジベース)レイヤー
      • 所蔵レイヤー
  • NIIが取り組むべき意義
    • NIIの強みを活かす
      • NIIの強みとは?
      • 大学や機関と連携しやすい立ち位置にいる
      • 研究者に近い
      • 研究開発力がある
      • 目録データベースを作り上げてきた実績
    • 柔軟に電子のリソースデータベースを作り、維持していきたい
  • ERDBシステムの実装概念図
    • 海外・国内のデータベース→ERDB→利用者、CiNii Core
    • ERDB:書誌-提供タイトル・パッケージ-契約情報、利用条件→電子版書誌ID
  • 実装するべく、ERDBプロトタイプ構築プロジェクトを立ち上げる
    • 目的
      • どういう情報が必要か?
      • どういう機能が必要か?
      • 特定の商品のトライアルではない
      • ERMSをつくるプロジェクトでもない
    • 実施体制
      • 参加図書館(12大学・機関)、JUSTICE事務局、海外・国内データソース提供者
    • スケジュール
      • 平成24年10-12月:課題の再検討、タスクチームの立ち上げ
          

プロトタイプデモ

  • パッケージ検索
  • パッケージの概略
  • 書誌一覧
    • 来年の契約など、ここで選定していく
  • ライセンス設定
    • パッケージ契約内容
  • 利用条件
    • 複数の書誌のうち、どの書誌に適用するのか設定できる
    • パッケージの中でも別の条件を適用可能
  • CiNiiで「電子リソースフルテキスト」へのリンクを設定
  • CiNiiの書誌情報からリンクを設定できる
  • プロトタイプ第1版でみえてきた課題
    • 共通スキーマの確定
    • 海外ナレッジベース動向の調査
    • 共通業務フローの確定
    • 統計機能使用の策定
    • 全体シナリオの策定:どこに向かってERDBが進んでいるのか?
    • 5つのタスクチームをつくり、検討を始めた
        

ERDBの5W1H

  • ERDBとは
    • 電子ジャーナルや電子ブック、電子データベースなどの電子リソースのタイトル情報や利用条件、契約情報などを有機的に統合管理するデータベース
    • つまり、電子リソースのための総合目録
    • 利用者は自分がどこまで電子リソースを利用できなくて困っているのでは
    • レファレンス担当も、一元管理していないために問い合わせがあったときに困るのでは
  • 誰のために?
    • 利用者、図書館、提供機関…
    • 利用者が第一
  • 何をつくるのか?
    • どの大学・機関が何を契約しているのかを正確に管理できるデータベース
    • 電子リソースのカタログ、ショーケースをつくる必要がある
    • 契約実態があり、利用実態がある
      • その管理をきちんとする
    • 書誌情報を識別するためのIDが付与できる仕組み
    • API連携が可能になる
    • 今までのデータベース(NACSIS)などと何が違うのか
      • 今までのデータベースは、書誌-所蔵の2レイヤー
      • ERDBには今までなかったKBレイヤーができる
        • KBレイヤーには提供タイトル、パッケージが含まれる
      • データを流通させている
      • どちらもCiNii Booksでしっかり利用できれば
  • どのように作っているのか?
    • タスクチームを作り、課題に対応
    • 大学により、ERMSがある大学や、独自に対応している大学、紙で対応している大学などまちまち
  • いつできるのか?
    • 目標;2014年10月(ただし、検討中でありたたき台)
    • 約2年後くらいには本格運用できれば、という予定
  • 今後の展望
    • 国内KBの持続可能性の確保
    • メンテナンス体制の整備・確立
    • データの取り込み&提供の自動化
    • JUSTICE契約実態調査の自動化
    • 認証システム等との連携など
        
        
        

「ERDBと国際連携:GOKb(Kuali OLE)とKnowledge Base+(JISC Collections)の動向」片岡真さん(九州大学情報システム部)、上野友稔さん(電気通信大学附属図書館)

  

  • 海外のナレッジベースの調査を行なっており、その報告
      

現状と課題

  • 商用ナレッジベース
    • 電子リソースの管理/サービスのための、海外商用ベンダー(EBSCOなど)がナレッジベースを提供
    • 各大学がリンク・リゾルバやディスカバリシステムなどのサービスに利用
  • 課題
    • 国内データベースについて正確な情報がナレッジベースにない
    • 電子リソースの契約情報・購読情報を正確に管理できていない
        

コミュニティベースのナレッジベース

  • これまでは商用だけだったが、コミュニティベースで共通に利用するためのナレッジベースを構築するプロジェクトが出てきた
  • 国内ナレッジベースを作り、海外のデータベースに渡すには、同一の規格で作らなければいけない
    • 今回の構築に参考にするために調査を行った
        
  • GOKb
    • コミュニティ管理によるオープンなナレッジベース
    • Kuali OLE、JISC Knowledge Base+へのデータ供給
    • APIによるデータ収集・提供
  • Kuali OLE
    • コミュニティベースの図書館管理システム
    • ローカルなデータ要素を管理していこうという取り組み
      • 購読、発注、アクセス権、ライセンス、利用統計など
    • Kualiの大学の基幹システムと連携している
    • ディスカバリサービスとの都合
        
  • Knowledge Base+(KB+)
    • JISC Collectionが提供する電子リソースをより効率的に管理することを目的としたシェアサービス
    • KB+に含まれるデータ
      • 出版データ、購読データ、ライセンス情報、利用統計
    • 利用統計を一元的に取得できる
  • Kuali OLE+JISC Collections
    • なぜ協力しているのか?
    • GOKbの共同構築
    • データモデルの共有
      • 電子リソースの適切な管理を可能に
           

ERDBと国際連携

  • 商用ナレッジベースに匹敵するデータ量/精度のナレッジベースの獲得
    • 標準IDの共有による統合的なリソースマネジメント
    • 出版社に対するインセンティブ
  • 国内と海外のナレッジベース交換による学術情報流通の促進
  • 労力の軽減
      
      

「国内データベースの現状とERDBとの連携について」伊藤民雄さん(実践女子学園情報センター)

  

用語解説

  • ナレッジベース
    • 電子情報資源を集約したデータベースのこと
  • ERMS
    • 電子情報資源(書誌・契約情報)専用の図書館システムのこと
  • ERDB
    • 複数の図書館の電子情報資源の書誌・契約情報を一元管理する総合目録
        

ナレッジベースの仕組み

  • リンクリゾルバの仕組み
    • ソースがあって、中間窓があり、ターゲットに行く
    • ターゲットにいくまでに、各機関のナレッジベースを通過する
  • ナレッジベースの精度・正確性がもろもろのサービスに繋がる
  • 現状として、国内に散らばるナレッジベースをまとめる
  • 国内ナレッジベース構築上の問題
    • 主な収録刊行物タイトルリストの問題
      • リストが提供されていたり、されていなかったり
      • ヨミや提供巻号のないものが多い
      • 五十音で並べるにはヨミが必要
      • 主題や分類が付与されているのは1つだけ
      • CiNii最大の問題点
      • 電子化されていない巻号がある
    • 目録規則上の問題
      • 誌名の同定
      • タイトル採取基準が違う
      • 誌名変遷の考え方が違う
      • 片方で10回以上変遷しているものが、もう一方では変遷していなかった
      • 同じタイトルでありながら別のものとして認定されている
    • メーカーの問題
      • 海外製品が主力
      • 維持管理は外国人スタッフ
      • ヨミの概念が理解できないのでは?
      • 五十音配列が難しい
      • 日本の電子雑誌事情が把握できない
      • 提供雑誌リストの不備を把握することはできない
      • 提供雑誌リスト以外の把握は事実上困難
          

演者4年間の活動

  • 日本語無料電子ジャーナルDBの構築
    • DOAJJ(2008)→JJRNavi(2009)
      2012年10月現在1万6千誌収録
    • ヨミも振り、巻号も記載
      大学図書館OPACでの利用を想定
      無料リンクリゾルバの提供
    • 機関リポジトリは、10/23付公開の麻生大学学術リポ時tp理までリスト化
  • 雑誌収録状況
    • メタデータの項目
      • 全27項目
    • JJRNaviの効果
      • 収録数
    • メンテナンス
      • 目と手で発見
      • 提供リストの不備は手作業で修正
  • 最大の問題点
    • 1万6千誌全てのチェックは困難
    • メーカーと交渉し、無料検索・リンクリゾルバの提供予定
    • ボランティアは辞めたい
  • 日本語の雑誌の管理は日本人が責任をもって構築するべき
    • それがERDBだ
        
          
        

質疑応答

  
Q/
NIIさんが考えているこういう事業は、大学にとって非常に重要。大学が共同してやっていく必要があるのでは。田邊さんのお話にあった、世界標準、ERMSでなERDBだということが非常に重要だと考える。リソースについては、現在国際的な標準がある。ACR2がRADに全面的に変わる。

田邊/
電子からスタートして、最終的に紙のデータを持てるようにしたい。流通しているフォーマットと対応がとれる形にしなければいけない。また、エンリッチメントの情報も簡単に取り込めるようにする必要がある。紙のデータをどう管理できるのか考えていければ。

  

パネルディスカッション「今後の展望に向けての問題提起と提言」

  

片岡/
ERDBには何があって何がないのか、説明できるようになって帰って頂ければ。
そのためにQ&Aを用意しました。

  

Q/どんな機能やサービスが提供されるのか?
  

A/当面国内ナレッジベースに焦点を絞る。国内の電子ジャーナルや電子ブックの提供タイトル・パッケージを収集し、各機関や商用ベンダーに提供。

Q/将来的にはどんな機能やサービスを提供するものですか?

A/JUSTICE参加館の情報集約を行う。利用統計の自動取得や、CiNii商用ナレッジベースなどへ所蔵情報のデータ提供。スタンダード   

ERDBを使うと大学や機関にどんな良いことがあるか?

Q/各機関で電子ジャーナルや電子ブックの管理が楽になるのか?
  
A/
直接的否DRMSの提供は予定していない。タイトル情報やライセンス情報をAPIで提供することを基本スタンスにしたい。そうのような情報をベンダーさんに提供し、相互に参照できるデータ流通モデルをつくりたい。
  
Q/各機関で作成しているデータベースリストのデータが提供されるのか?
  
A/
個人的には一番やりたい所。データベースリストの管理は各大学でも困っているのではと推測する。データベース自体は数が少ないので、なんとかできるのではないか。パッケージレベルの情報として、なんとか管理できるのでは?
データベースは概要が必要。その情報や、アクセス、ライセンスの情報収集について、プロジェクト内で検討している。
  
Q/各機関の購読規模や管理体制の差異によるメリットは?
  
A/
アクセスできる資料というか、自分の図書館のサービスの拡充に繋がる。国内無料のデータベースを追加したり、その他の情報を加える。
ナレッジベースの管理を既に入れている機関には二重の手間になるという指摘があるが、国内ナレッジベースに関しては、ERDBは強いのでは。直接大学にデータを下ろすのではなく、他のデータベースを通して提供していく。情報の手入力は大変だが、一括で登録するシステムをつくりたい。
  
   

国内ナレッジベースについて

Q/国内ナレッジベースの情報は主要な商用ナレッジベースすべてに反映されるのか。情報更新頻度やスピードはどうなっているか。
  
A/
まだ具体的なことは決定していないが、目標としては月次が良い。今のナレッジベースベンダーさんも更新の情報取得は苦労している。出版社から直接情報の入手を検討しているが、これも月次を目標としたい。
  
Q/維持管理は誰がどのように行うのか?
  
A/
海外では何十人も作業している。ここはNIIの中でも一番キモとなる部分で、ナレッジベースの精度、品質をどこにおくかで維持体勢がかわってくる。精度を上げればあげるほど人が必要になるが、できるだけ書誌調整を機械的に行いたい。最終的には人は必要になるので、そこを何人か検討しながらやっていきたい。
海外メーカーナレッジベースの管理体制を調査した。どの会社も維持管理組織はあり、10名から70名程もある。日本語対応スタッフもいる。更新は確認してから即時が多い。英語以外の言語資料の提供は、スタッフだけでなく顧客の協力が必要だという回答があった。出版社からベンダー、ベンダーから顧客など、輪のような管理体制が必要になる。
  

JUSTICE関連について

Q/JUSTICE参加館向けの契約状況調査はERDBから行えるようになるか?
  
A/
紙との仕分けなどがあるので、一概にERDBだけで行えるかというところは、検討する必要になる。これで100%になるかは、JUSTICEとも協働しつつ考えたい。
JUSTICEチームは今回のプロジェクトに大きく関係しており、多大なるご協力をいただいている。
  
Q/JUSTICE提案書の内容が登録されて、自由にダウンロードできるようになるのか?
  
A/
既にJUSTICEさんとお話して、JUSTICEさんが持っている内容をマッピングしている状態。ただ、コード化など課題があり、今後管理項目なども検討していきたい。
  
Q/(会場から)JUSTICEの内容のダウンロードはありがたいが、JUSTICE参加館がERDB利用館ではないと思うが、そのあたりはどうか
  
A/
今は、JUSTICE参加館を調査し、その参加館に対して対応したい。しかし、その後は対象を広げていきたい。開始当初は、ERDB参加館はJUSTICE参加館である必要があるかもしれない。
  

ディスカバリーについて

Q/World Catのような、電子コンテンツのアクセス情報が入ったディスカバリーサービスの提供を検討しているか?

A/各館の情報を入手できれば、先ほどのCiNiiのデモのように、統合的に管理したい。
  
Q/CiNii Books上での総合目録が実現すれば、その流れはあるのではないか。
  
A/メーカーさんとの共存共栄があるので、CiNiiでの見せ方が落とし所になるのではと思う。ディスカバリーに向けたAPIの提供など。
  

システム間連携について

Q/図書館システムとの連携について
  
A/
大きく2つある。管理面・業務系システムと、OPACなどとの連携と。今回の図書館総合展でもベンダーさんとお話をして盛り上がったが、どのように連携すれば良いのか、紙の支払いデータや電子の支払いデータをどう集計すれば良いのか、どういう項目を渡せば良いのかを具体的に検討し、進めていきたいと考えている。
  

最後に

片岡/
今回、NIIさんから直接お声かけいただいて参加した。大学として欲しいサービスは、関わって自分から提案しいていけるというメリットがある。トライアルで製品を利用できたり、プロトタイプの計上やワークフローの検討、統計ツールなど得意分野に別れているうちに、電子リソースの管理をコーディネートする人材の育成にもつながっているのでは。  

田邊/
今後は、声をかける大学さんを増やしたいと考えているので、参加したいという方はぜひお声かけいただきたい。また、研修生を募集しているので、ERDBを一緒にやっていける人材を求めているので、それもお声かけください。
  

  
  

(執筆:平山陽菜)