つくってみた ライブラリアンとエンジニアの協働-ライブラリアン自らのアイディアを実現するためには?

つくってみた ライブラリアンとエンジニアの協働* ライブラリアン自らのアイディアを実現するためには?

  

日時:2012年11月22日10:30~12:00
場所:第2会場
主催:マイニング探検会
協力:株式会社ネクスト、アカデミック・リソース・ガイド株式会社
講師:
 清田陽司さん(株式会社ネクスト 技術基盤本部 リッテル研究所)
 大向一輝さん(国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 准教授)
 山田奈々(青森県立保健大学附属図書館 主査)
 村木彩乃(日本事務器株式会社 営業本部技術統括部文教サポートセンター)
 日向野達郎(東京電機大学大学院未来科学研究情報メディア学専攻 修士2年)
  
概要:合宿成果報告と、組織の枠を超えて行動する意義について。
フォーラム詳細:http://2012.libraryfair.jp/node/887
  

フォーラムの構成

  • 司会による趣旨説明
  • 開会挨拶
  • マイクロボランティア班企画紹介
  • 人的キュレーション班企画紹介
  • レファレンス班企画紹介
  • ディスカッション、会場質問
  • まとめ
      

その他の記録

「司会による趣旨説明」三津石智巳さん

  

  • マイニング探検会は今年で3年目になる活動
  • 9月に山中湖情報創造館にて3日間の合宿を行った
  • 今回のフォーラムではその合宿の成果を3組が発表する
      
      

「開会挨拶」清田陽司さん(株式会社ネクスト 技術基盤本部 リッテル研究所)

  

マイニング探検会について

  • マイニング探検会とは、知識情報産業に関わる人々が新たな情報サービスのプロデューサーとして活躍するための知識を学ぶ組織
    • 2010年4月より月一回のペースで開催している
  • これまでの合宿
    • 2011/7 共生プログラミング合宿@真鶴
    • 2012/9 企画合宿@山中湖情報創造館
        

今回の成果発表

  • キャリアパスファインダー班
  • レファレンス班
  • マイクロボランティア班
  • 目標:魅力的な企画書をつくる!
      

企画合宿について

  • 企画合宿のねらい
    • 誰かを説得するための技能を磨く
      • プロとして生きるためには不可欠なことである
    • より短い「コード量」でより大きな「仕組み」を実現する
      • 企画書づくりは究極のプログラミング行為
  • 企画立案の際に利用した思考ツール
    • ブレインライティング
      • 短時間で大量のアイディアをたたき出すための思考ツール
      • 紙にひとつづつアイディアを書いて順番に回していく
      • 他の人のアイディアを参考にふくらませてみることで新たなアイディアが生まれる
      • 6人×5個×6回=108個のアイディアを30分で出すことができる
    • VMSO
      • Vision, Mission, Strategy, Objectiveの頭文字
      • まずはじめにVisionを定め、それをどんどん具体的に落としていく
  • 合宿という場の意味
  • 合宿の意味を改めて考えてみたらふたつの意味があると思った
    • 1つ目は所属組織の枠を超えて個人として活動することができること
    • 2つ目は異なる組織に所属するメンバーが同じツールを共有することができること
        

図書館の本質的機能とマイニング探検会の目標

  • 長尾真さんの「未来の図書館を作るとは」より
    • 図書館とは単に本が集まっている場所ではなく、知の共有システムが本質的機能である
    • 議論によって知識を生み出していく場があるならば、それが建物である必要はない
    • 古代アレクサンドリア図書館でも知を共有することで、新たな知が生み出されていた
  • 知の循環をつくっていくことがわたしたちが目指すところ
    • 知の循環とは、考えたことをアウトプットして共有して、新しい知識を生み出していくという循環
  • 知の循環を作り出すための仕掛けづくりを考える
  • 今回の企画では以下の3つの仕掛けを提案する
    • 利用者同士の間の壁を超える
      • 他の利用者は本を読んでなにを考えているのかを共有する
    • 組織の壁を超える
      • それぞれの組織の中で自分と同じ問題意識を持っている人はいるけれども、なかなかそういう人が表に出てこないという現状を改善する
    • 利用者とライブラリアンの間の壁を超える
      • レファレンスは図書館の基本的な機能であるが、レファレンスとは何かということを利用者はあまりわかっていない。その壁を取り除くための方法を考える
          

マイクロボランティア班企画紹介:本の評価/日向野さん

  

マイクロボランティア班のはじまり

  • 三津石さんからマイクロボランティアをテーマにしたいという紹介があった
    • マイクロボランティアとは一人ひとりが少ない労力で参加できる簡単なボランティア
    • 一人の負担が少なくてもたくさんの人が参加することで大きな目的が達成される
    • 代表例はGooglePersonFinder
  • 合宿で具体的にこれをどう使っていくかを議論した
    • 図書館×マイクロボランティアという方向で話を進めた
    • 図書館側にとって利用者にどのようなことをしてもらえばうれしいか
      • そこから利用者に本の感想をつけてもらうという企画になった
          

企画の内容

  • 図書館への返却タイミングを利用し、本を選びやすくするための評価データを収集する
    • 評価を見ることで利用者が図書館の本を選びやすくなる、また図書館は利用者に本を推薦しやすくなる
  • 本の評価というのは本を選ぶ際に有用な参考情報であるが信頼性に疑問がある
    • ECサイトでは購入価格で評価が左右される、購入者でなくとも評価できるので本を読んだかどうかわからない、ステマや荒らしの可能性があるなどの問題がある
    • その点、図書館利用者による評価は価格に寄る評価の偏りはおこらない
    • 返却時のタイミングを利用することで、本を借りた利用者はおそらく本を読んだという保証がつく
  • 評価データの収集方法とシステムの導入
    • カウンターに入力端末を用意して、返却時にバーコードを読んだあと、端末のボタンを押して貰う
      • 楽しかった、泣けたなどの評価キーワードのボタン
      • 他の人にも読んでもらいたいか、はい/いいえで答えるボタン
  • 企画のポイント
    • 利用者の負担を軽くし、複数の図書館で行える仕組みであること
      • 多くの評価データを収集することにつながる
    • OPACに他の利用者の評価を表示することで利用者が本を選びやすくなる
    • 図書館側でも特集が組みやすくなるというようなメリットがある
  • 評価データは館種や地域でパッケージ化して販売することを考える
    • ただしデータ収集に協力している館には無料でデータを提供することで、データ収集へのインセンティブにする
  • 企画の達成目標は本一冊に付き20名分の感想、5年間で100万冊、システム導入館100館
  • システム導入シナリオについて
    • ブレインテックの図書館システム「情報館」と協力することで、学校図書館を中心に広げていく
        

今後解決すべき課題

  • テキストマイニングをして、既存のレビューサイト等から評価を収集するなどが必要になる
    • 技術的課題も
  • 合宿後の意見
    • 学校図書館の返却タイミング=休み時間
      • 評価を入力する時間もない
    • 入力方法をより完結にする必要がある
      • 楽しかった、泣けた、笑えたなどの項目ごとに返却Boxを用意しておき、そこに入れるだけにするなど
          

「人的キュレーション班企画紹介:図書館業界人のためのキャリアパスファインダー」村木彩乃(日本事務器株式会社 営業本部技術統括部文教サポートセンター)

  

背景

  • 電子書籍等の出現による図書館業務・業態の変化
  • 人的流動が少ないことによる司書教育システムの老朽化・相対的なレベルの低下
  • 雇用形態の変化
  • 財政難による図書館予算の削減
  • 図書館及び図書館の役割が変化している
  • そこで、最終目標(Vision)
    • 図書館員の専門性とモチベーションアップをすることで図書館員の地位向上へつなげる
    • 図書館の役割を高める、広めることで図書館の活用促進
  • 図書館業界の人材の可視化・共有と、需要と供給を最適化するためのコミュニティ構築
  • これを行うためにキャリアパスファインダーを作成する
      

キャリアパスファインダーとは

  • キャリアアップしたい側の使い方
    • 自分のスキルを可視化・共有化しキャリアアップを図る
    • キャリアアップのための情報を調べ、コミュニティ内のQ&Aへ投稿
  • キュレーター側の使い方
    • 埋もれている人材を発掘して人材の流動化を図る
    • 需要と供給の双方向から人材を探す
        

利用について

  • 利用シナリオ
    • キャリアアップするにはどうすればいい?というような疑問があるとき
    • キャリアパスファインダーを利用することで勉強会の情報を集められる
  • 数値目標
    • 継続可能なビジネスモデルを目指す
    • 一年での目標値を示す
      • 登録人数:100〜200名
      • フックアップ事例:20件〜
      • 利用回数:参照1~2万PV
      • Q&Aへの投稿:100-200件
          

「レファレンス班企画紹介:クイズラリー」山田奈々(青森県立保健大学附属図書館 主査)

  

背景

  • レファレンスサービスの利用者数はOPAC端末の利用者数よりも少ないという現状
  • レファレンスサービスは心理的障壁を感じる利用者が多い上に、知られていないことも多い
  • 自分の疑問が図書館員に頼むほどでもないと思う人も多い
  • レファレンスサービスを利用した結果、満足したかどうかも不明
      

利用されないレファレンスに対してなぜOPACは利用されるのか

  • 現在の利用者は検索することが日常のことになっている
  • OPAC端末はどんな検索をしても怒ったりしないので、気軽に試せる
    • もちろん図書館員も質問に対して怒ったりはしませんが(笑)
  • しかし、OPAC検索でうまく見つかれば利用者はその結果に満足するが、満足したかどうかを図書館員は把握できていない
  • 利用者の不安、障壁を解消し、レファレンスをもっと身近にしていきたい
      

VMSOによる企画立案

  • Vision:あらゆる「調べる」をHappyに!
  • Mission:問題解決を必要としているすべての人々に新たな道筋を示す
  • Strategy:調べ方への操船をつくる
    • 仕掛けとしてクイズラリーを用いる
      • クイズラリーを通してレファレンスを知ってもらう
      • 書架にクイズの設問を貼り、答えは設問の近くの本で調べられる
      • 回答は書架に貼られた二次元コードを読み取ることでできる
    • レファレンスへの障壁を下げる
      • 5問セットにして調べ方のストーリーが見えるように工夫などしたい
  • なぜクイズラリーなのか
    • 利用者側のメリット:クイズに答えたとき、グッズがもらえるなどのごほうびがあること、時事や身近な事柄についての豆知識になる
    • 図書館側のメリット:利用者の利用指標。レファレンス事例DBのインフラ化
    • クイズラリーの実践を中心として様々な活動への広がりも考えている
      • 書架利用の活性化により、リソースの有効活用へつなげる
      • レファレンス事例の活用測定により、事例づくりへのフィードバックとする
      • ユーザーコミュニティの形成につながり、図書館のサービスの改善へ
  • Objective:調べ方への関心を、クイズラリー参加者数で定量化
    • 4年間で毎年、参加者数を2倍ずつにしていく(5年間で16倍へ)
        
        

ディスカッション、会場質問

  
(以下敬称略)
  

大向/
最初は清田さんがマイニング探検会を提案した。現在のマイニング探検会についての印象は、活動が長持ちしているということ。月一回集まってディスカッションをしたり、Ustreamで中継したりして、みんなで企画してものづくりしましょうということ、これは誰しもいいことだと思うが、実際にやるのはなかなか大変。一からなにか作って完成させるということには、メンバー同士のコミュニケーションやそれぞれの定期的な参加が必要になる。その中でこれだけ活動続いたというのはすごいし、マイニング探検会は面白い活動だと思う。
  

大向/
まず個々の発表について。実現への最初の関門は物分かりの悪い上司です。そのつもりで質問します(笑)
  

大向/
マイクロボランティアについて。本について評価するのはおもしろい。しかしいまの方法だとかなり本の種類を選ぶのではないか。たとえば、研究の本を泣けたと評価するなどはないので。この評価は特定のジャンルを想定してるように見える。
日向野:利用されるのは学校図書館を想定している。参考書であればためになった、など、評価項目の設計は考えようという話がメンバー内でも上がっていた。
  

大向/
人的キュレーション班について。あえて新たにこういう図書館業界中心のサービスを作る理由は?
  

村木/
特定の図書館業界だけでなくITとか、業界を限ることによって、その業界についての情報を見つけやすい点が有用だと思う。
  

大向/
Facebookのグループ機能なんかはどうですかというつっこみがあるわけですが。図書館業界の人的キュレーションにおいて、こういう機能があるから使うんだ、という点があればいいなと。
  

清田/
元々は岡本さんが講演を依頼する時に使えるシステムがあればいいなというところだった。
  

村木/
最初はそういうところで、あと図書館の人はあまり自分から発信しないので、そういう層をどんどん救いあげていこうということがある。
  
大向/
クイズラリーについて。レファレンスをこの試みで活性化できるのか?
  

山田/
それを期待しています。意外にこういうことをみんな質問しているんだというのを知ってもらえれば、レファレンスに対する障壁が下がるのではないかと考えて、事例を見てもらうことを考えた。それを通して。レファレンスという方法があるということを、必要な時に思い出してもらえればと。
  

大向/
Objective内の初年度は何人のりようを想定している?
  

清田/
レファレンスは知られていない、そもそも認知度はゼロに近い。まったく知られていないところからどうやって広げていくかが重要だと思う。認知してもらうためのパスをどう作るか、そのフレームワークを意識した。必ずしもレファレンスを使ってもらえなくても利用者の認知として残っていくことが大切かなと考えている。
  

会場/
人的キュレーション班へ。図書館業界特有のデータベースを作るということが重要だと思った。ポイントは人材のデータで図書館業界特有の属性をみつけることだと考えるが、そういうアイデアはあるか
  

村木/
自分の特化した業務を入力する仕組みを作ることで、キュレーター側としてもこのイベントはこういう業務に特化した人を、というようなマッチングができるのではないかと考えている。
  

会場/
何科の担当など、所属については自由入力なのかどうか知りたい
  

村木/
自由入力にすることを考えている
  

会場/
ものすごく特化した職種の募集をしている例というのは既にたくさんあるし、新しい役職も増えて生きているので、そういうものをデータベース化するとそういう役割の需要があるというのが見えてきてよいのではないかと思う。
  

大向/
企画をするとツッコミというのは具体例が出る。固有名詞を当てはめて動くことでよい企画になるのではないかと思う。ペルソナという手法がある。あるユーザを勝手に作る。プロフィールも、架空の人格をつくって、その人がこの企画に触れたらどう行動するかを具体的に想像しながら、ブラッシュアップしていく。最初に企画を作るところでは、今回はVMSOのようにトップダウンでやっているが、固有名詞を当てはめたときに動くかどうか、というボトムアップの手法を用いることで、企画のやり方の勉強になるのではないか。
大向:グループで議論していく中で議論が暴走していく、技術的に不可能であるなど、そういう方向に行ってしまうことがあるが、そういうことはあったのか。
清田:合宿前のブレインライティングを行なっている途中ではあった。クールダウンの期間をおくことで改善していった。
  

大向/
企画にリアリティを与える重要な要素としてObjective、目標値を明確にするということがあると思う。Visionを定めるのにに時間がかかってObjectiveはおざなりになりがち。だけど実はそこが大事で、そのバランスを見極めることはワークショップでも重要な点だと思った。
  

大向/こういうかなり特殊なワークショップに参加されて、煮詰まった時の経験談などは  

日向野/
学生が自分と三津石さんの2名だけで、メインは現場で働いている方たち。学生の立場からでは現場で実際になにに困っているのかがわからないので、テーマ設定のときは苦労した。今回は三津石さんからの提案だったので、自分はいまも煮詰まっている状態。
  

村木/
初年度から参加している方と比べてどういうテーマを出していいのかというとまどいがあった。最初の方はそれが原因で煮詰まっていたが、合宿を通して交流ができた。思ったことをなんでも言っていいんだと気づいて、これからもっと積極的に参加したいと思っている。
  

山田/
現職の図書館員が多い班だったので、自分の図書館に持ち帰って実現できるものを、と考えていたが、実際にやってみるとなかなか実現するには難しかった。
  

清田/
マイクロボランティアの班はかなり苦しんでいたが、最後の夜にまとまった感じだった。プレッシャーを感じられるところは合宿のいいところだと思った。
  
  

まとめ

  

清田/

  • マイニング探検会の活動は2年半ほど継続していて、メンバーの入れ替えも行われているが、新メンバーを募集している。ルールは出欠を必ず表明すること。主に品川で活動している。活動についてはFacebookやTwitterで発信しているので興味のあることはぜひチェックを。
  • 12/1,12/2に京都で出張開催する。紅葉観光もかねてぜひ京都まで来てほしい。
  • こうして企画を立てるだけでなく、ブラッシュアップをしていきたいと考えている。会場のみなさまにはぜひフィードバックをいただけるとうれしい。
      
      
      

(執筆:小林映里奈)