これからの情報サービス:大学は図書館に多くを期待している-IAALの取り組み

これからの情報サービス:大学は図書館に多くを期待している-IAALの取り組み

これからの情報サービス:大学は図書館に多くを期待している-IAALの取り組み

  

日時:2012年11月21日13:00~14:30
場所:第9会場
主催:NPO法人大学図書館支援機構(IAAL)
講師:
 米澤誠さん(東北大学附属図書館・IAAL理事)
 高野真理子さん(IAAL理事)
司会:
 伊澤和夏さん(IAAL)

概要:学生の主体的な学びを促すこと,そしてそれを支える「人」に注目!
フォーラム詳細:http://2012.libraryfair.jp/node/878
  
  

フォーラムの構成

  • IAALについての説明(司会・伊澤和夏さん)
  • 「これからの情報サービス:大学は図書館に多くを期待している」米澤誠さん(東北大学附属図書館・IAAL理事)
  • 「アイアール白熱教室 これから情報サービスの話しをしよう」高野真理子さん(IAAL理事)
      

IAALについての説明(司会・伊澤和夏さん)

  

  • 大学図書館への支援の一貫として、図書館総合展では過去2回フォーラム開催、一度はブースも出展した。今回はIAALらしいフォーラム開催を依頼され、「これからの情報サービス」として題して、理事である東北大学・米澤さんに講演をお願いした。
    • 後半では活動の紹介もさせていただく。参加者とこれからの大学図書館の情報サービスについて語り合いたい。
        
        

これからの情報サービス:大学は図書館に多くを期待している(米澤誠さん)

  

自己紹介等

  • 東北大学の附属図書館に去年の4月、3.11直後に赴任した。復旧について図書館の皆さんと、大変な思いをしてきた。
    • 図書館は復旧工事をし、新たにラーニングコモンズをオープンしようという段階。
    • 東北大学全体では建物がダメで作り直しているところもある。これからも継続してご支援を。
    • ブース出展もしているのでお時間おありのときに。
  • 今年度に入りようやく心に余裕もできてきて、もともとの関心である学習支援について考え始めた
    • 考えるだけでは活路が見いだせない。学生をつかまえて、実際の今の生活がどうか、学習がどうかを聞きながら、私自身考えを深めてきた。
    • 半年くらい、考えてきた成果を話したい。
        

中教審答申「あらなた未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」の読み解き

  • 学生支援を考える上で、世の中全体の現状と問題意識はぜひ共有すべき。なので、ここから話を始める
  • 簡単に言えば能動的学習、アクティブラーニングへの転換。
    • 受動的に聞くだけではない学習への転換が必要ということ。
    • ラーニングコモンズに関心があれば「あれか」と思うかも。
    • ディスカッション、ディベート等の双方向なスタイルで学生の主体的学習を促す試みが必要。それこそ生涯学習の力になると言われている。
  • その中で課題としてあげられているのが学生の学習時間の増加・確保
    • 授業以外にどれだけ勉強時間を確保するかが重要、という答申内容
    • 十分とりなさい、という答申だが、じゃあ学生たちはどうか?
  • 学生の状況
    • なかなか授業以外では勉強しない
    • 日本の大学生の学習時間は極めて少ない
    • 苅谷剛彦さんの『イギリスの大学・ニッポンの大学』が参考になる。イギリスから見た日本。今後の大学教育必須の本
    • 日本の大学教育がいかに学生に授業外の時間を求めていないか
    • 主体的に云々、学習時間を云々というが、具体的な実現手段を欠いた理想だ、と苅谷剛彦は中教審答申を批判
    • 学生は4年生になると就活がある。3年で週に10種類以上の授業を細切れで受けさせる。学生は聞くのでせいいっぱい。
    • 実際に東北大の学生の1週間を見ると・・・工学部1年生、週15コマとっている。予習・復習なんて無理。授業に出て聞くだけ。授業外で勉強なんてできない。それが現状。看護学の1年でも同様。文学部の2年生でも週12コマとっている。
    • 聞いてみても、予習・復習はできない、出るのが精一杯、と学生は言う。
    • 苅谷剛彦「1週あたりの授業が多いので教員は予習を課さない」。教員が、学生がやってこれないからと課さない。話を聞いて試験を受ければ単位、それが日本の大学の実情。
  • そういう状況でどういう学生支援ができる?
      

アクティブラーニングの意味

  • 知識を身につけるだけでなく学生が自ら主体的に動く
    • 北川智子『ハーバード白熱日本史教室』にアクティブラーニングの実例がある
    • 「KYOTO」という授業。「洛中洛外図」と京都駅で配布している無料の地図を学生に配る。1m四方の白紙に、大きな地図と今の地図を見ながら京都の地図を書かせる。自分たちなりに京都を理解させる。学生が自分の手を動かす。アクティブラーニングのいい事例。
  • 教科書を学ぶ方法は近代社会で成立した、さいきんできた学習法
    • 元来、学習はコミュニケーションの中で培われてきたもの
  • 山形大・ベストティーチャー賞を受けた先生の授業・・・まさにアクティブラーニング
    • 100人くらいの大講義室。学生は後ろを向いたりしてグループを作る。しかし固定机でやりにくい環境だった。環境も変えなければいけないことを示す事例
    • 東大のアクティブラーニングスタジオでは自由に設備も動かせる。ラーニングコモンズあたりでも導入されている
  • 小中高ではもうアクティブラーニングにだいぶ前から取り組んでいる
    • 「オープン教育」。一方的な授業ではなく、いろいろな主体的な学びを支援する
    • これがようやく大学にも求められてきた、というのが実情
    • 固定的な机・椅子ではなく組み換え可能な空間が必要
  • 中央大学附属高校の場合
    • 図書館でアクティブラーニングができる環境ができている
    • 50台以上の端末/発表ができる環境も。ラーニングコモンズ的な環境
  • 教えられるだけではない学習の環境
    • 現代社会が求める幅広い能力の向上が期待できる
    • 対人関係、コミュニケーション能力、論理的思考能力、建設的評価能力・・・アクティブラーニングの本当の意味
    • これも過去の中教審答申、2008年の「学士力」の中で言われた「汎用的技能」と関わる
    • 単なる知識ではなくものを考える力が言われている・・・これら全体が「情報リテラシー」と私(米澤さん)は思う
  • 2008年中教審答申資料:社会人として期待する企業側の能力と大学の取り組みの関係
    • 大学が一生懸命取り組んでいる専門知識・関連知識を企業は求めていない
    • チーム・連携力、実社会との連携力、コミュニケーション能力などが、企業としては期待しているが大学側では少ないもの
    • 汎用的技能についての取り組みが大学では弱い・・・以上、文系の場合
    • 理系の場合は文系に比べると専門知識も求められる。理系は理系の大学教育は基礎知識として必要と思われていて、それにプラスして汎用的技能も求められている
    • 企業が採用する際、面接で重視するポイントは? 私も総務課長なので面接で学生と相対するが、知識はもちろんのこと、面接で通るのはやはり、人柄がいいとか、コミュニケーションができるとか、入社後も仕事をする可能性とか、思考力・熱意。そういう人と一緒に働きたい。専門知識は下に来てしまう。
    • 大手企業・理工系では人柄はやや落ちるが、汎用的技能が上位に来る傾向を示す。
    • 大学4年間を過ごして、社会人になるとき、学生はこういうことを求められる。大学は何をすればいい?
  • より広範な学習の視点
    • 専門的知識は授業で一生懸命やる。場合によって研究者・企業研究所に就職、というのはここでケア
    • 公務員試験等では一般教養の知識が要る。しかしこれは自力でやらなければいけない、大学はできない
    • 汎用的技能は? 大学の中ではあまりやっていない。課外活動、サークル、バイトといったところで学生は社会的技能を身につける。それが今までの状況
    • これは笑い話だが・・・東北大学の応援団とよく付き合っているのだが、4年生が関東の大手企業に決まった。面接の際には勉強をまるでしないで応援団のことしかしていなかったので、応援団のことだけ話したという。非常に規律に厳しく、仲間と行動し、他人のために応援する。大学3年そればかりやった経験を話したら受かったという。「そんなものかな」と思うが、課外活動で汎用的技能が培われている
    • しかしアクティブラーニングも汎用的技能を培うもの。今までの受動的な授業内容だけではなく、アクティブラーニングを大学がうまく取り入れて、知識の伝達とバランスよく大学の中で「学び」として定着させることで。知識があるだけでなく汎用的技能も身につけた社会人が育成できる、大学教育ができると思う。
  • これこそ今、大学で求められているアクティブラーニング
       

主体的な学びと図書館

  • 最近の方の中教審答申。「きめ細やかな始動をサポートするスタッフが不足」しているという
    • 図書館については「主体的な学習を支える図書館の充実」「開館時間延長」とある。
    • 開館時間延長に目をむけがちで「24時間開ければいい」という人が出てくるだろう。それでいいわけではないことは皆さんご存知と思う。
    • 「主体的な学習を支える図書館」について具体的には書かれていない。なので開館にばかり目が行く。私なりにどうしたらいいかの話をしたい
  • 東北大でキャンパスを歩いていると、学生が勉強しているのは・・・
    • 学食/談話室など
    • 図書館の会話しながら勉強できるスペースはまだまだ足りていない
    • 東北大でラーニングコモンズ予算を出すときにはこの写真を使った。「東北大の学生は学食で勉強しているんですよ」と学長に説明。「こりゃいかん」となったのか、幸い予算がついた。
  • 図書館1階を1面、ラーニングコモンズにする。12月にグランドオープン
    • グループ学習できる可動式の机椅子や、ファミレス的なボックス席でグループ学習できるようにしたり
    • フロア全体、勉強内容について小声でならしゃべっていいとしている。うるさくなく、静かに勉強している姿を見る
  • これも苅谷剛彦『アメリカの大学・ニッポンの大学』を読みながら・・・
    • 従来型の講義形式は「学ぶかたちの定型化」を必要としない、受動的なもの
    • 論理的に文章がかけない、人の話を聞けない、人前で話せない、調べられない・・・
    • 聞いてノートとって試験受けておしまい、がこういう社会人を生んでいる
    • そういう授業ではレポートが課題となっても、きちんとした注・引用・参考文献リストの付け方や図書館でのリサーチまで求めない授業が多い。これは東北大でもそう。そういうのが学び方。学び方がはっきりしないので教育が行われていない。理系は違うかも知れないが、人文社会系は特に、学ぶ側の基本的なスキルが決まっていない。
    • これは学生と話していても通関する。レポートの書き方を知らないし、書いても添削してくれないのでどこが悪いかわからないし、レポートを返してもくれない。
        

ライティング教育の重要性

  • 私もここ数年取り組んで、重要性も伝えてきた
    • ライティング=学び方、学ぶ形。習得すればいろいろな学びに活きる
    • ドラッカー曰く「単なるコンピュータリテラシーではなく情報を使ってものごとをなしとげる」情報リテラシーが重要、と言っている。私の持論もそう。
    • プロセスはいろいろあるが、レポート作成をターゲットにして、いいレポートを書くには、とするといい。いい情報を集めて素材として書く必要がある。自分の頭だけでの感想文は評価が低くなる。そういうことで、ライティングをすることは、プロセスを含めて一つの学びの仕方を覚えること。
  • 井下千衣子『大学における書く力考える力』から
    • ライティングを通じて考える力が身につく。だから私はライティングを重要という
  • ライティング教育は大学教育で中心的な話題ではなかった
    • ようやくいろいろな学会で取り上げられるようになってきたが、従来は重視されてこなかった
    • ライティングにおける情報源の重要性も教員の認識としてなかった
    • 情報源としての図書館/図書館資料の重要性の理解にも欠けていた
    • ちゃんとしたライティングには見合った情報源がいるが、ライティングをやっていかなかったので目がいかなかった
  • ライティングの基本・・・文献に書かれた事実・他人の意見に対し、自分の意見を書くのが基本
    • その基本が大学で教えられていないのでレポートが書けない
    • いかに文献上の事実・意見を多く集めるか。それが集まればレポートを書くのは簡単、それらに自分の意見を加えればいい。
    • いかに多くの素材を集めるかが重要で、それには文献検索が重要。ライティングと図書館利用は表裏一体
    • 授業中で適切なライティングを指導し適切に評価すれば自ずとそうなる
        

アフォーダンスとしての図書館

  • アフォーダンス・・・「アフォード=気づきを提供する」もの。IAALニュースレターにも書いたが・・・
    • ICT学習をアフォードする設備。ICT設備を図書館に置くことで、それを使って勉強するんだとアフォードしている。
    • グループ学習室はグループ学習をアフォードする。英語多読コーナーがあれば英語多読をアフォードされる。古典がずらっと並んだ空間を見ればそれを使って学習・研究できることを光景から感じる
    • 夏目漱石『三四郎』で、40時間も講義をとってつまらない、という話がある。「図書館に行ったらいいよ」と言われて行く。書物がいくらでもある環境で、本を取り出して調べている人もいる光景を見る。それを見て三四郎は自分も読みたい、勉強したい、ということに至る。図書館が学びをアフォードしている典型的事例。
  • 施設だけではなくそこにいる人、他人もアフォーダンスをしている
    • 図書館で一生懸命勉強している人を他の学生が見たら? 「自分も勉強しよう」と思う。
    • 自宅ではそういう気分にならない。だから思い切って大学に行って、図書館で、まわりも勉強している中で勉強する。それが図書館としての重要性だと思う。
    • 図書館職員が教えている姿も見せることが重要。学生に対し教える意欲と知識があることを、目に見える、他から見える場所でやることが重要。図書館が教育をアフォードしている。
    • ビブリオバトルやオープンキャンパスで膨大な書庫を見せると高校生は感動する。普通の教室を見ても感じられない、「大学ってこんなところなのか!」となる。さらに『解体新書』の現物を見せたりもする。中高生が学ぶ志、意欲を持てる。多くの中高教員に聞いても、大学図書館で子どもにこういうものを見せることで入試モチベーションが上がるという。図書館とはそういう場所。
  • 継続学習・生涯学習についてのドラッカーの言
    • その方法を身につけることが重要。知識ではなく学ぶ意欲を身につけることが重要。
    • それを培う場所に図書館はなるし、そういう役割をはたす必要
        

これからの教職員像

  • 「職員だから」で線を引いてはいけない
    • 教員/職員の二分法はやめるべき。授業外で学びを支える新たなティーチングスタッフとして、教員・職員一体となって改革すべき
    • 職員だからって教えられないことはない。自分たちの能力で出来る限りのことは学生に対してすべき。
  • 何を教えるのか?
    • アクティブラーニングをまず理解した上で、図書館が何をできる考える。
    • これからの大学教育変革の中で手を携えるには我々自身がアクティブラーニングを理解しなければ。
    • ライティング教育・・・簡単なことから。文献の引用法や巻末にリストを付ける方法。そういう些細なことも学生はわからない、図書館員なら教えられる。文の良し悪しではなく形式的なことなら教えられる。
    • 学習の中での図書館・情報資源の活用推進。
    • 教員にも働きかけて協働を進める。
  • 図書館・情報資源の活用については図書館員はずっとやってきた
    • 今まで大学教育と結びつかないと言われていたのは、大学教育が遅れていたから。本当の教育なら当然要求されてしかるべきだし、アメリカではそうなっている。
    • 日本の教育は授業側の教育が学びの形になっていなかったので図書館が使われていなかった。
    • 今までやってきたことに自信を持っていい。絶対、注目される時期が来る。授業が変わり、図書館をよく使う方向になれば、活躍のしどころ。そこで情報リテラシー教育を自信を持って進められる。
    • もう間もなくそのときは来る。そこに備えて、確実に仕上げて時を待つべき。
  • 今までの大学教育・・・授業の中で、正課で行われるものが主流
    • アクティブラーニング等・・・授業ではやらないがその他でできる/授業の中でもできるものとしての教育が課題になっている。
    • われわれは、授業のサポートだけではなく、もうちょっとこういったことを意識し強化し教員と連携する姿勢を見せること。
    • さらには、就職のための勉強・活動も大学としては支援すべきと思うし、いっそう意識してサポートしていく気持ちで、一体となって活動していくことが必要。
  • これから大学教育は変わっていく
    • 新しい学びを理解するとともに、今までやってきた情報リテラシー教育/情報サービスを、再び確実に自分たちのものにしていく必要がある。
    • ぜひそういった面での自己研鑚を深めていただければ。
        

質疑応答

  

Q/関西学院・井上さん:常々、米澤さんのおっしゃることに感心しながら拝聴している。今日のお話もうなずけるものだった。最後の点、もっと積極的に教員に働きかけるというのはまさにそうと思うが、具体的に図書館・組織としてするといいアプローチや、個々の職員がすべきアプローチのイメージがあれば、ぜひご教授を。
  

A/私も日々、その実践を行なっている。図書館組織として、教職協働を、というのを組織として意思統一するのは非常に難しい。山形大学にいたときも東北大学でもやっているのは、まず大学教育を真剣に考えている先生を見つけて話をすること。個人的つながりで信頼関係を、コミュニケーションにより作り上げることが一番重要。お互いにわかりあって。そういう先生は学内で孤立してFD等苦労していることが多い(会場・笑) そういう先生をぜひ捕まえて手を取り合えてやっていくのがいい。私も捕まえて、芋煮会もしたりして。個人の信頼関係を作って、「こうやりましょう」と歩み寄っていくと新しい関係も出てくる。そういうことを続けていくことで大きな波になり、大学に新しい学びの形を考える気運が出てくる。味方を作るのが一番いい。
  

Q/井上さん:ぜひ心がけたい。・・・先生方は、こういった話題をどれくらい意識されている? 孤立ともおっしゃっていたが、舵を切ろうという先生は多い?
  

A/全体からすれば多くはない。高等教育を考えているのは大学の中の一部だし、教育学でも高等教育を専門にする方は少ない。しかし大学は中教審にあるような改革を求められているし、各大学でそれを誰かが担う。担った先生のお手伝いをできるのではないか。
  

Q/「これからの教職員像」の一部に質問。職員=新たなティーチングスタッフという。我々もグループ会社の丸善とコモンズサービスを企画してライティングについても教育学の先生を回っているところなのだが、図書館スタッフが学生に対してどのような支援があったらいいのか一番いいのか。ご意見を聞きたい。
  

A/非常に難しい。常々言っているのは、「こういうのを」という標準がひとつあるわけではなく、大学や学部・学科ごとに必要なものは異なるはず。ライティングについては標準的なものになるだろうが、まず皆さんがどういう大学でどういう学びが必要か考えることが重要。例えば看護学なら文献を調べる以上に実習結果をまとめることが求められる。それぞれで本当に必要とされるものが何かを考えないと。図書館の思い入れだけで設計しても学生に有効なものではないかもしれない。理系なら実験レポートの書き方をやる、というのもあるだろう。できあいのものでやるのではなく、一人ひとりが自分で見つめてやるといいのではないか。ラーニングコモンズについてもそういう言い方をしてきた。学生の学びについても同じこと。
  

Q/国立国会図書館・斎藤さん:質問というか感想になるが。2週間ほど前にアメリカに旅行に行って、グリーンカードを取得した日本人にアメリカのことを聞いた。アメリカの大学は夢を求めている人は決して見放さない国だと目を輝かせて言っていた。それに対して日本がどうなのか。図書館を、能動的な学習環境にすることも大事だが、日本の大学・社会構造ももっと柔軟に・・・閉塞感があると思うので変えないといけない。法人化されて経営に参画する機会も前より増えたと思うので、日本の大学も変わっていければいいと思う。図書館がそこにも関わっていければと思うが、米澤さんのお考えは?
  

A/あまりに大きな話で答えられるか・・・できることは限られている。大学全体や教育を変えられはしない。今いる学生になにができるのか。小さなことで構わない、学生に対しなんらかの支援をしていくことを少しずつでもやっていくことが先につながる。そういう姿を学生や大学の管理職陣に見てもらう機会が増えれば、そこから展開がのぞめるようになるのではないか。まずは自分たちができることをやっていくこと。
  
  

「アイアール白熱教室 これから情報サービスの話しをしよう」(高野真理子さん)

  

  • 数えたら参加者の7割は大学図書館の方だが・・・
    • 総合展の場は艦種を超えたコミュニケーションが重要と思う。
    • タイトルはハーバードのもじり。今回は私がサンデル教授にちょっと変わってみたいと思う。
  • 皆さんと一緒に、これから情報サービスの話しをしたい
    • マイクランナーは東京大学法学部図書室の中村美里さん。
    • 図書館サービスの話しを、今から皆さん一緒にしましょう。
  • まずはちょっとショッキングな話から・・・OCLCの2005年の調査によれば、情報検索でまずあたるのは、84%がサーチエンジンだという
    • この話有名だと思うのでご存知の方もいるだろう。
    • 私はこれを聞いてショックだった。図書館のwebサイトは1%しかいない。
    • 他には? eメールなんかもある。2005年段階でこういう状況。
    • OCLCが立派なのはこういう調査をしっかりしていること。
    • 皆さん、このたった1%をどう受け止める?
  • 2010年にさらに調査しました、というのもカレントアウェアネスに出ていた。
    • 2010年版では・・・サーチエンジン82%。図書館、の代わりにWikipediaが3%に。
    • 図書館はこの間、みんなに使ってもらうためにポータルとか色々考えた。が・・・利用は0%に。これはアメリカの調査だが、日本は?
    • CiNiiは凄いな、と思う。日本でこれを調べたらどうなるかわからないが、アメリカの2010年では図書館は0%。
  • Wikipedia、皆さんどうですか? 百科事典とどう違う?
    • 百科事典、紙のものばかりではない。電子のものもある。Wikipediaと図書館の情報、どこが違う? 誰か。
    • 手を挙げないとさしますよ・・・増田さん
  • 増田さん:更新の速度?
    • 高野さん:更新の速度。確かに。今やっているドラマでもう出る。
  • でも、図書館でWikipedia使う? 豊田さん、どう? あ、ちなみに最初2人はサクラです(笑)
  • 豊田さん:正しさに疑問が残ります。百科事典は精査されているけれど、図書館でWikipediaを使うのは参考程度では?
    • 高野さん:調べようと思うと出てくるので「ほうほう」となることもあるのでは。
  • Wikipediaにはちゃんと査読システムがある。誹謗中傷が乗らないとか、根拠に基づいているかは運営者がチェックしている。
    • それが信頼出来るものかは、皆さんが「Wikipediaじゃ・・・」と思うのは署名がないからと、明日になったら違う記事になっているから。そこが図書館と違うところ? 情報の質の問題として重要と思うかも? 違いのポイントはそういうこと?
    • 利用者がそれをうまく使い分けなければいけないかもしれない。
  • では、Yahoo! 知恵袋と図書館のレファレンスは? 永野さん?
  • 永野さん:知恵袋は便利ですが、誰が答えているか、匿名でできちゃう。レファレンスは図書館がしっかりしたものを提供いただくのが違うところではないか?
    • 高野さん:司書が信頼されているから図書館のレファレンスは違う。誰かわからないものよりも図書館の司書だから違う?
  • 山本さん:人に対面して人に聞きたくないことはインターネットを利用するメリットはある。ただ、インターネットだと一言、「これについてどうですか?」という質問に「~です」で終わってしまうが、レファレンスなら質問の背景を聞いて「~ですね」と言ったりもできるので、より本質に近くなるのでは。
  • 中村さん:私個人的な考えでは、Yahoo! 知恵袋は聞きやすいのと、図書館のレファレンスでもきちんとした答えが返ってこないこともある。まだ、「図書館にわざわざ聞くことじゃない」ことはYahoo! 知恵袋が活躍しているし、質問の解決ということならどちらで解決してもいいのでは?
    • 高野さん:「図書館に来た人を手ぶらで返さない」というのは?
  • 中村さん:「ありますか?」「ありません」ではなく「ありますか?」「ありませんがこちらには・・・」としている。
  • 高野さん:Yahoo! 知恵袋創設時にいた、岡本真さんの講演によれば、その信念は「知恵を差別しない」ことだという。これを聞いて思い出したのが、オルテガの言葉で、「司書の使命は図書を選別することだ」と言った。それがオルテガの評価を二分させた。図書館の自由との関連。図書館はすべてのものをすべてに、ではないか、というので、オルテガと衝突する人が出てきた。
  • OCLCの調査を見て思うが、図書館のライバルは誰か? WikipediaやYahoo! 知恵袋はライバルと言えないだろう。Googleについても、Googleのミッションはどういうことか、というお話をいただいた。その使命は「世界の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです」という。「ランガナタンと同じ?」と聞けば、同じかも知れない。ミッションも同じだし成長する有機体なことも似ている。
    • HathiTrustも出ていて、Googleが電子化したものを図書館が見せている。図書館の違いは組織化だろうか? どうだろう?
  • 図書館は束になってかからないとネット社会での存在意義が示せない?
  • あ、最近はディスカバリもありましたね。知っている方は?・・・けっこう。
    • ディスカバリって、考えてみればhouse keeping。ポータルにしか過ぎない。情報の粒度がいろいろなものをごちゃ混ぜ・一気に見せられる、ということ。
    • 私はもう図書館は束になってかからないと、ネット社会ではいらないことになりかねないのではないか。図書館が協力したところで、他とどこが違うかといえば、組織力? 情報を組織する力ではないか?
    • 情報の組織力とそれをうまく使える図書館員像を考えてみましょう。ある図書館にない資料も他にはあるかも知れないのでILLもできる。聞いて「ないよ」と言ってしまえば「図書館なんていらないね」となってしまう。そうならないために必要なのは1人1人。教育を支える図書館員1人1人のスキルがなければ、米澤さんのお話も成り立たない。専任/アウトソーシングとか言っている場合ではない。カウンターにいる時点で利用者から見れば「図書館の人」。専任にかぎらずすべての人に「自分は関係ない」と思わないで欲しい。
  • このスキルについて考えた結果、やっているのが『IAAL大学図書館実務能力認定試験』
    • 会場で買っていただけると特典も様々!
    • 問題が気になる/重要なスキルが気になる方はぜひ買って!
    • 課題の内容・・・「総合目録-図書初級」、「総合目録-図書中級」、「総合目録-雑誌初級」、「情報サービス-文献提供」
    • これまで「1人ずつの能力が大事」といいつつ、能力があることを示してあげていなかった。それをやる。単純に合っている/間違っているがわかる問題を100問。
    • NACSIS-CATのデータを支えるのは1人ずつ。CATのデータもWikipediaと一緒で誰でもできるが、支えるのは1人1人。情報サービスの質を支えるのも1人1人。
  • かつて、図書館員は書誌の組織力をOJTで養えた
    • カウンター⇒目録⇒レファレンス
    • 今はいきなりレファレンスに座らされる。利用者はその人がどういう知識を持っているかわからずに来る。目安がいる
    • 目安のために「情報サービス-文献提供」をはじめた。いろいろ検討して100問作った。合格は難しいかも?
  • 組織力に注目したい・・・目録の世界も変わっている
    • AACR2はAACR3にならない、のを知っている方・・・(会場・思いのほか少ない。記録者感想:うそ、知らないの?!)
    • AACR3ではなくRDAになる。知らない、では済まない話。
    • FRBRは知っている? 目録の機能要件をまとめたもの。それをRDA、Resource Description and Access、では取り入れた
    • 紙も電子もリソースはなんでも図書館でやる。それがRDA。情報がいろいろなもので出てきた。組織力、なんのための目録化を考えないといけなくなった。そこで出てきたのがFRBRに基づいたRDA。
    • 目録規則が変わるだけではない。Library of Congressは来年、3.31で完全にRDAに移る。すでにNACSIS-CATにも入っているし、ドイツ、カナダ、イギリス・・・来年の第一四半期にRDAになる。日本の図書館でRDA? 皆さん物怖じしてしまうかもしれないが、図書館の組織力を考えるなら、皆さんも国際標準についていけなくなる。それは確か。
    • どこかが日本の図書館員向けに講習会をしなければいけない。学会で発表するようなものではなく、現場で目録担当にしなければいけない。
    • で、さっそくですがIAALでやります。まだ、RDA自体が知られていないので、人が集まるか?という意見の理事もいたが、90名しか入れない部屋で、今日公開からさっそく1人申込があった。図書館員にとって組織力が底力。ご興味・お時間がある方はぜひこちらにも。
  • 米澤さんのお話と私ではずれてしまったかもしれないが・・・1人ずつのスキルという点で皆さんがこれからしなければいけないことをお話できたかと思う。
      
      

フォーラムをみた感想

記録者もIAAL会員だったこともあり(会費を払い忘れていて現在退会扱いみたいなのですが・・・すぐに払います!)、もともと興味があったフォーラムなのですが、事前に思った以上にお話を聞くのにのめりこんでしまい、時間を忘れていました。
米澤さんのご発表については、記録者自身非常勤講師等で教員として学生の教育・学習に関わる機会も多く、自分自身の今後についても参考になるヒントをたくさんいただきました。
『ハーバード白熱日本史教室』についてはまさに米澤さんのブログで紹介されていたので自分も読んでいたのですが、その他の紹介されていた文書・理論・本等もぜひ目を通したいと思います!

高野さんのお話は、実は途中で「確かに図書館は誰がやっているかわかっている・・・気がしているかも知れませんが、利用者から見れば実力のほどがわからない方々という点で、WikipediaともYahoo! 知恵袋とも変わらない、むしろ現在の実績でいえばネットの方が信用は高いのでは?」と言いたくてうずうずしていました。
しかし、最後に高野さんがIAALの実務能力検定試験に話しを持っていかれたところで「このためだったのか!」と思わず膝をうちそうに(記録係なのでしませんが)。
そうです、これまで「本当にスキルがあるの?」がわからなかった図書館員のスキルを示すものとして、実務能力検定試験があることは、「図書館員がやっている」ことの信頼性を非常に高めるものになるのではないでしょうか。
目録系に続いて「情報サービス-文献提供」も追加された、とのことで、これまで参加の機会のなかった閲覧系メインの方もぜひ受けてみていただければ、と思います。
  
  

(記録:佐藤翔)