国立国会図書館の新たなる挑戦 -デジタル情報時代における課題の解決に向けて

国立国会図書館の新たなる挑戦 -デジタル情報時代における課題の解決に向けて

  
日時:2012年11月20日 10:30~12:00
場所:図書館総合展第2会場
主催:図書館総合展運営委員会
講師:大滝則忠(国立国会図書館長)

概要:「東日本大震災アーカイブの構築」に向けた取組みなど。
フォーラム詳細:http://2012.libraryfair.jp/node/828
  

  

構成

  • 国立国会図書館について
  • 国立国会図書館の今後:私たちの使命・目標2012-2016
      

その他の記録

はじめに

  • この四月から国立国会図書館長に着任
    • 新たな立場で国立国会図書館の発展に最大限貢献したい
  • 今日は、国立国会図書館の取り組みを限られた時間の中で詳細にお伝えしたい
    • 今日に限らず、NDLの活動に様々な関心をもって頂き、ご意見を寄せて頂きたい
        

国立国会図書館について

  

国立国会図書館の主な法的基盤

  • 国立国会図書館法という法律がある
  • 国会法130条の中で国会図書館の設置が定められている
    • 国会図書館法では、議会図書館としての性質と、国立図書館としての性質の両方を規定されている
  • 国の機関として、法規に基づいて運営されている
      

国立国会図書館の基本機能

  • 6点挙げられる
    • 国会のブレーン=国会の活動を補佐する機能
    • 支部図書館制度=行政・司法各部門と連携する機能
    • 蓄積する=情報資源を蓄積する機能、これが一番大きな機能
    • 報知する=書誌・データベースを作成する機能
    • 提供する=文献情報を提供する機能
    • 連携する=内外の図書館、関係機関などと協力する機能、これからの話のポイントになる機能
  • これらの機能は、設立当初から連綿とあるもの
       

国立国会図書館の運営体系概念

  • 国会の衆参両院内にある議員運営委員会の図書館運営小委員会が、国立国会図書館を直接監督している
    • ある程度以上の規模の政党・会派が議院運営委員会に携わっており、国会議員の先生方に国会図書館の在り方を考えてもらえる仕組みになっている
        

社会的合意に基づく国立国会図書館の運営

  • 4月に着任し、国会や出版各社に挨拶に回った
    • 国会図書館への期待は非常に大きいと感じた
    • 同時に、どのように社会的合意に基づいて国立国会図書館を運営していくか考えなければならない
  • 求められるプロセスとしては以下があげられる
    • 国会における立法を通じて
    • 両院の監督を通じて
    • 上記プロセスに入る前段階・あるいは前段階として例えば以下のようなプロセスが考えられる
    • 審議会方式などによる検討
    • 関係府省との連携
    • 関係者との協議
    • 利用者を含む国民の意見の聴取
  • こういったプロセスが今までのやり方であり、これからの私の館長としてのスタンスでもある
      

国立国会図書館の現況

  • 年間予算は約197億
    • その中で約24億が資料費にあたる
  • 年刊47万人に利用されている
    • それだけでなく、デジタル資源などの遠隔利用も多数ある
  • デジタル情報は増加している
    • 現在までに143TBのデジタルデータを保存している
    • これからもどんどん増えると思う
        

国立国会図書館の施設

  • 3つある
    • 東京本館
    • 関西館
    • 国際子ども図書館
  • 建物としては21万平米
  • 3つの施設が一体になって運営している
    • 資料を分散配置
    • OPACによる検索でどこにあるかはもちろんわかる
    • ポイントは、遠隔からの利用の場合は複写利用が可能であるという事
    • スピード面・価格面で良質な水準に到達している
        

国立国会図書館の施設整備

  • 20年ごとに機能アップに取り組んでいる
  • 現在は第4期にあたる
    • 第3期までの計画を完成させるという意味で成熟期と言える
    • と同時に第二創業期とも言える
    • デジタル情報時代に本格的に対応していく
    • まさにあらたな創業の苦しみの中で未来を展望しながらやるべき時期が来ている
        

最近10年の国立国会図書館

  • 今年は関西館10周年の節目
    • 3つの施設が一体になった体制がスタート出来て10年という事
  • 並行して、デジタル情報時代への本格的な対応が進行している
    • インターネットを通じた二次情報へのアクセス
    • 電子的な一次情報へのアクセスの拡大
    • インターネット上のレファレンス関連情報の充実
    • 図書館協力事業の展開
        
        

国立国会図書館の今後:私たちの使命・目標2012-2016

  

  • おおむね5年間の大目標を柱建てる
    • 重点目標、及びロードマップは年度内に公開する
        

活動評価体系

  • 旗印として使命・目標・ビジョンがある
    • 今回の話もそうであるし、ビジョンを2007年や2004年にも公開している
         

私たちの使命

  • 国立国会図書館は、国内外の知識・文化の基盤となる
  • 国民の創造的な活動に貢献し、民主主義の発展に寄与する
       

目標1:国会の活動の補佐

  • 国会図書館という名称から、国民が使えないのではないかという勘違いがある
    • これは単純な勘違いではなく、我々がそれを国民に伝えていかなければならない
  • それと同時に、国会の活動を補佐する機能も忘れてはならない
  • 年間4万件以上の調査以来が国会から来ている
    • 国会のブレーンとして非常に重要な活動
    • ほとんどのリクエストが「今日・明日中に知りたい」というもの
    • 緊張感あるやり取りの中で我々の活動が成り立っているというのは非常に重要な点
    • 人材育成的にも、国民サービスと国会サービスの人材が入れ替わる為、良い環境だと考えている
  • 国会に対するサービスだけでなく、国会発生情報へのアクセスも保証しなければならない
       

目標2:収集・保存

  • 国内刊行物の網羅的収集を掲げている
    • 必ずしも網羅出来ているわけではない現状もある
    • 納本制度を、出版社や著者と協力しながら強化していかなければならない
  • 今まで視野にありながら収集できなかった資料もある
    • 例えば放送番組の収集
    • 放送事業者の理解を得られない段階ではあるが、今後その必要性を十分に理解できる努力をしなければならない
    • 最終的には社会的合意に基づいて、その収集に着手できるよう取り組みたいと考えている
  • また、動画などの収集も行わなければならない
    • 技術的に厳しい面もあり、努力が必要
    • 東日本大震災アーカイブ事業にも不可欠な点であると考えられる
  • また、デジタル情報時代に的確に対応することも課題となっている
    • インターネット資料を収集できる取組が段階的に進んでいる
    • 国などの官発信のインターネット資料の精度収集
    • 民間発信のオンライン資料の制度収集
    • 第一弾として、無償でDRMの無い資料の収集をはじめる
    • 有償の民間発信のオンライン資料の精度収集
    • 制度設計と社会的合意が必要である
  • 所蔵資料のデジタル化
    • 明治時代の資料をデジタル化することは、資料にとって過酷なこと
    • が、同時に資料への簡便なアクセスの為には非常に重要なこと
    • 社会的合意の中で許される範囲で努力しなければならない
         

国などのインターネット資料の精度収集

  • 制度化以前は許諾による選択的収集、あるいは提供、というような実験を繰り返してきた
  • 2010年度より、国、地方公共団体、独立行政法人などの資料に対してロボットによる許諾なしの収集を開始した
    • インターネットを通じて、どなたでも利用可能な提供を開始している
         

オンライン資料の段階的な制度収集

  • 平成10年からパッケージ系電子出版物の収集を開始した
    • オンライン資料収集の先駆け
  • 官が発信するオンライン資料は、許諾なしに収集が可能になった(前述)
  • 次は民から発信されるオンライン資料
    • 無償出版物は来年から収集できるようになる制度が施工予定
    • 引き続きの懸案として、有償出版物やDRMのある出版物の収集に関する制度化が問題
    • まずは図書・逐次刊行物に相当するオンライン資料の収集に焦点をあてる
  • 納本補償金の問題がある
    • 電子出版物の費用モデルがどう形作られていくのか
    • 従来の事業モデルが適用できなくなるという危機感もある
    • どういった社会的合意にたどり着けるか、十分に時間をかけて取り組まなくてはならない
         

所蔵資料のデジタル化

  • 和図書については、大体1/5程度のデジタル化が終了
  • 和雑誌に関しても大体1/4程度のデジタル化が終了し、検索できるようになっている
    • 和雑誌に関しては著作権処理がとても難しい
  • 資料全体でみるとデジタル化できたものは1/4程度の約225万冊
    • その中で著作権処理が終わったものからインターネットで公開している
         

著作権法との関係

  • 著作権法によりデジタル化の許諾は必要ない
    • インターネットによる公開は、著作権消滅分と、許諾を頂けた分の資料
    • 慎重な調査の結果、著作権者が不明なものは、文化庁の長官裁定によりインターネット公開している
  • 著者から公開の許諾が得られなかった分の資料は館内利用のみという形になっている
       

目標3:情報アクセス

  • 収集資料を簡便に利用し、かつ迅速的確にアクセスできるような手段を整備しなければならない
  • 専門的な機能としては、書誌・データベースを信頼性のある形で作成しなければならない
    • 利用者が求めているのは、媒体にかかわらない検索機能
    • 紙資料とデジタル資料の書誌データを一元的に扱うフレームワークが必要
  • 日本全国書誌を充実させる
  • 文献情報を提供する機能
    • 「文献情報」という言葉自体は、デジタル情報時代において一新すべき時に来ているが、ここではそのまま用いている
  • デジタル情報資源の利活用の推進
  • 国立国会図書館サーチ
    • 印刷物とデジタル情報の一体的利用による、ハイブリッド図書館の実現
  • レファレンス情報の共有化
    • 全国の一線級の図書館員との横のつながりの強化
         

デジタル情報支店の利活用の促進

  • 他機関の保有する電子情報資源へのナビゲーションを実施
  • 国全体としての効率的な資料配分と国民の容易なアクセス
    • 実現の為に他機関と分担・協力を行う
  • 「国立国会図書館サーチ」
    • 紙媒体だけでなく、デジタル情報を一体的に利用可能になる
    • 検索だけでなく、コンテンツ本体の閲覧も可能にする
    • このサーチによって、国立国会図書館だけでなく他機関の蔵書やデジタル情報資源も検索可能
    • 全体の窓口として機能できる
    • NDL蔵書目録だけでなく、デジタル資料総合目録、レファレンス事業の目録、全てのメタデータを集約
    • 国立国会図書館サーチによる一括探索が可能に
    • 連携機能としては、現在までに二百余りのデータベースと接続している
    • NII、JSTはもちろん、JPOやJAEA、全国の大学などとも接続している
    • 使い勝手をあげるために努力する。意見を頂きたい
         

デジタル化資料の図書館などへの公衆送信

  • 国立国会図書館では多数の資料の電子化が進んでいる(前述)
  • これを国立国会図書館だけでなく、全国の図書館などで使えるようにしなければならない
  • 全体としてはやはり著作権の処理をしなければならない
    • 公衆送信の仕組み、フローに関しては大枠は出来ている
    • 細かな枠組みを当事者による協議で決めている
    • 今年度から広報を開始し、再来年の1月までにはシステムを作って従来の図書館間貸し出しのような形ではないデジタル資料の利用を可能にしていきたい
    • これから最後にむけて作業を詰めていかなければならない
    • 来月以降色々とお知らせしていければ
         

視覚障碍者などのアクセシビリティ向上

  • 今後の方向性
    • デジタル化資料とインターネット環境を活用した情報提供
    • デジタル化資料の利活用
    • 将来的に録音図書・点字図書のデジタルデータの収集・保存
    • 最終的にはテキスト化し、それを自動読み上げまでつなげたいと思っている
         

目標4:協力・連携

  • 国内外の関係機関と連携して、知識・文化の基盤を一層豊かにし、人々の役に立つものとする
  • 図書館界に限らない広い社会の関係者との連携・協力が不可欠である
       

目標5:東日本大震災アーカイブ

  • 未曽有の災害の記録・教訓を後世に確実に伝えるための東日本大震災アーカイブを構築
  • 復興会議による復興7原則の中で、「記録を残す必要がある」と、強く謳われている
  • 東日本大震災アーカイブの基本理念
    • 記録は一機関では取れない
    • 国全体として収集・保存・提供を行う
    • 官民の機関によって、分担、連携、協力する(分散収集・分散保存)
    • 発信や伝達の為、国立国会図書館は連携の結節点としてあるべき
  • 東日本大震災アーカイブポータルを構築中
    • コンテンツとしては従来の出版物だけでなく、ドキュメントや動画なども考えられる
  • 各機関が保有しているコンテンツを、開発中のアーカイブで網羅的に検索可能にする
  • 来年の3月には公開予定
  • 連携の結節恬として国立国会図書館はあるべき(再述)
    • 府省連絡会議/総務省など
    • 先行アーカイブ機関(みちのく震録伝など)
         

目標6:運営管理

  • 透明性が高く効率的な運営管理
  • 行動なサービスを担うことが出来る人材の育成
    • 創造力(想像力)豊で意欲的な人材
  • 必要な施設の整備
       
       

結びに

  • 私は国立国会図書館を七年前に一度退職した
  • その間、図書館はどうあるべきかを考えてきた
  • 今、国立国会図書館長に着任して、従来のままの考え方で図書館を運営することはできないと考えている
  • 新しい時代にあたり、社会的合意のなかで、新しい図書館像を模索してかなければならない
  • 国立国会図書館は、カウンターパートナーとしての皆様に対して敢えて耳障りな事も言いながら、新たな時代の図書館像を模索していかなければならないと思っている
  • 今日お話ししたのは、まさにこれから始まる国立国会図書館の新たなる挑戦の柱
  • 今後とも国立国会図書館の取り組みにご理解・ご協力をよろしくお願い申し上げる
       
       

質疑

Q/資料の収集についてだが、写真やゲーム、フィルムなど、今日の発表の中で言及されなかったような媒体についてはどう考えているか
   

A/ゲームについては、重要なアーカイブコンテンツだと考えているが、これに関しては収集するだけでは意味がない。どうやるのがベストであるのか検討中。写真に関して言えば、今までは収集対象ではなかった。だが震災アーカイブを立ち上げるにあたって収集しなければならない局面も出てくる。関係各所と連携しながら検討していく。フィルムに関しては、例えば映画フィルムは法に収集対象として規定されている。ただし、劣化や可燃性が高い問題など様々な問題がある。そこについて配慮しながら著作権処理にも気を配り、公開可能なものについては公開していきたい。デジタル時代だからこそ取り組まなければならないとも考えている
   

Q/国会法のもと、国会議事録を作成・公開していると思うが、あれは誰が作っているのか。
   

A/紙媒体のみだった時代から考えれば今は夢のような時代。衆議院と参議院の独自性を生かしながら、国会図書館が仲人のような立場になって、衆参両院と国会図書館の三者共通のシステムを20年程まえから運用している。最近では大日本帝国議会の議事録もデジタル化している。作成については、そういったデータを両院から提供して頂いて、国会図書館で検索可能なように処理している。国会の様子を記録した動画も最近は録画されているが、こういったデータと併せてどのように公開するべきかは、我々だけでなく、国会全体の課題の一つにもなっている。
   

Q/最近の国会では、フリップや配布資料などを利用しているが、議事録だけではわからない。今後はどうなっているか。
   

A/ご指摘の通り。それは我々の課題の一つだと思っている。戦前に関しても、請願書など見れないものも膨大にある。そういったものを見られるようにするのも我々の課題の一つ。いずれ国会の中で理解を得ながら前進すべき部分だと認識している。
    

   
   
   

(執筆:松野渉)